農地守る国の責務 法定化を 農地法制の在り方研究会2023年2月8日
農水省の「農地法制の在り方に関する研究会」は1月24日に第2回会合を開いた。このほど公開された議事概要から議論を紹介する。
議題は「農用地の確保に関する国の関与の在り方及び食料安保の観点に立ったゾーニングの在り方について」。
会合では柴田明夫(株)資源・食糧問題研究所代表や福与徳文茨城大学教授ら有識者からヒアリングを実施し意見交換した。
柴田氏は「世界の穀物需給と今後の見通し」のなかで、ロシアは食料を「戦略物資」と位置づけ、中国は輸入能力向上方針から自給率向上へ政策転換(農地面積を1億2000万ha、食料を6億5000万t確保)するなど世界の食料事情が不安定となっていることを指摘し、「国内生産基盤である農地の確保と輸入依存からの脱却が急務」と強調した。
また、福与氏は、農振法の区域区分制度(優良農地確保のためのゾーニング)の課題は「都市的開発が優先され区域変更が比較的容易な点。食料安定供給の観点から一定規模以上の農用地区域からの除外は国の関与が必要」と指摘した。また、「地域計画」の策定などで地域の話し合いを優良農地の保全につなげることが重要で「それによって農用地区域外の農地を農用地区域へ編入することも可能」とした。
埼玉県、長野県の農政担当者からは、開発を望む圧力は強く、市町村・都道府県だけで対処することは困難で農用地区域からの除外については「国の関与のもとで適否を判断する必要がある」、「どのような国の関与があり得るか検討が必要」との考えが示された。
委員の意見交換では「農地は食料安全保障の基盤。農振法で国が農地を守る責務があることを法定化すべき。農用地区域の除外は国の関与が必要」、「農用地区域外で地域計画が作られた場合、区域外の農地を農用地区域に編入するなど地域計画との整合を図ることが重要」、「食料安全保障に加えてエネルギー確保の観点から、農用地区域の除外について国が関与する仕組みが必要。そのうえで地域計画を活用し農地の集積・集約化を進めていくことが重要」などの指摘があった。
そのほか優良農地の確保は「ゾーニングではなく農地法の転用許可基準を厳格化するほうが有効」との意見がある一方、「農地法の転用規制はわが国固有のもの。先進国にはない仕組み。一方、ゾーニングはどの先進国にも存在する」との意見もあった。
また、農用地区域の除外に国が関与することについて「何を根拠に何を判断基準にするのか、地方公共団体との役割分担を考えていく必要がある」と指摘もあった。
研究会は月1回程度のペースで開かれる予定。テーマはそのほか農地の適正利用強化策の在り方(農地の権利取得規制、営農型太陽光発電等)、担い手の6次産業化、川下等との連携強化の支援策。
重要な記事
最新の記事
-
どこまで理解しているのか小泉大臣【小松泰信・地方の眼力】2025年6月25日
-
フードバンク、子ども食堂への備蓄米無償交付を追加 農水省2025年6月25日
-
【人事異動】農水省(6月23日付、24日付、25日付)2025年6月25日
-
ブラジル向け精米 検疫条件が緩和 農水省2025年6月25日
-
【JA人事】JA福山市(広島県)占部浩道組合長を再任(6月24日)2025年6月25日
-
【JA人事】JAとうと(岐阜県)古川敏之組合長を再任(6月20日)2025年6月25日
-
【JA人事】JAいずみの(大阪府)谷口敏信組合長を再任(6月25日)2025年6月25日
-
【JA人事】JA松任(石川県)得田恵裕組合長を再任(6月21日)2025年6月25日
-
【JA人事】JAハリマ(兵庫県)柴原利春組合長を再任(6月21日)2025年6月25日
-
エンゲージメント向上へ若手職員がプロジェクト 「目安箱」設置も JAさいたま2025年6月25日
-
土壌診断研修会(基礎編)を開催 JA全農みえ2025年6月25日
-
みえの米ブランド化推進会議総会を開催 高温耐性「結びの神」拡大へ JA全農みえ2025年6月25日
-
「2025愛媛みかん大使」募集中 JA全農えひめ2025年6月25日
-
第53回通常総代会を開催 JA鶴岡2025年6月25日
-
青森県産 稀少な大玉さくらんぼ「ジュノハート」を数量限定販売 JAタウン2025年6月25日
-
【農と杜の独り言】第1回 国際園芸博覧会とは 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年6月25日
-
アズキの遺伝子の知見を利用 ダイズのさやの弾け難さを強化 農研機構2025年6月25日
-
「水稲移植栽培における除草剤体系処理によるナガエツルノゲイトウ防除技術」SOP公開 農研機構2025年6月25日
-
"カメムシ急増"に天然成分100%の「モスガード スプレー」 第三者機関の試験で一定の効果 たかくら新産業2025年6月25日
-
近赤外分光とAI活用の次世代土壌分析サービスを開始 片倉コープアグリ2025年6月25日