【気候危機】猛暑に稲作農家や酪農家も苦悩「米の高温障害避けられず」「牛の乳量減で経営に打撃」2023年8月9日
猛暑が続く中、稲作農家や酪農家も農作物への影響を懸念する。「米の高温障害は避けられない」「乳量が減って経営に打撃を受けている」。さらに熱中症を防ぐための農作業時間調整や牛舎の高温対策にも追われている。
コシヒカリ主体の生産者 「乳白米など心配」
「常に水をかけ流していますが、これだけ厳しい暑さが続くと高温障害が心配です」
埼玉県北部の加須市周辺で約53haで米を生産する「おぐらライス」の小倉祐一社長は、猛暑による米への影響を懸念している。「26度以上が1週間続くと高温障害が出てしまうといわれる中、37度や38度になる日もあり、7月中旬からほとんど雨も降っていません」。
小倉さんのほ場では、埼玉県で開発された高温に強い品種「彩のきずな」も15ha作付しているが、主体は人気の高いコシヒカリだ。出穂期に高温にさらされると玄米の一部が白く濁る「乳白米」などが出やすく、品質が下がってしまう。「収穫してみないと分かりませんが高温障害は多少出てしまうと思いますので、できるだけ出荷の際に取り除きたいと思います」と語る。
さらに連日の猛暑の中、熱中症対策への注意も必要だ。「日中は暑すぎて外に出られず、朝4時から作業をして昼間休んで夕方から作業という状況です。水管理を徹底するとともに人の安全対策もしっかりしてこの夏を乗り切るしかありません」
一等米比率さらに低下のおそれ
加須市を管轄する「JAほくさい」によると、「北川辺コシヒカリ」のブランド米で知られる現地の昨年のコシヒカリの一等米比率は5%以下だったという。「今年はさらにそれを下回るかもしれません」とJAほくさい北川辺営農経済センターの須賀大輔さんは語る。
須賀さんによると、今年のコシヒカリの出穂は7月14日ごろで、その後、20日間ほぼ高温にさらされており、一定の高温障害は避けられないとみる。「水管理やケイ酸をまくなどの対策を呼びかけていますが、それで対応できる暑さではない気がします。食味のいいコシヒカリへの農家の方の愛情は強いですが、これほどの猛暑になると品種を変えてもらうことも考えないといけないかもしれません」と話す。
魚沼コシ産地 一部で深刻な水不足
全国有数のブランド米魚沼コシヒカリの産地も猛暑への対応に追われている。
新潟県魚沼市で約80haのほ場でコシヒカリを中心に作付けする大規模農家、関隆さんは、連日、早朝から水管理に追われている。「水源からポンプで水を引ける場所はいいが、山の沢から水を引いている水田では沢の水がなくなって田んぼまで届かなくなってきています。このまま雨が降らないと大変深刻な状況になります」と語る。
この夏の魚沼市は38度を観測する猛暑日があったほか、雨が少なく、関さんは水不足と高温障害への不安を抱えながらほ場を回る日々を送っている。
「35度以上に暑さが続くのは異常ですし、高温障害も多少出ると思います。とにかく雨を待つしかありません」
千葉市の酪農家「毎年気温が1度上がっている気が」
酪農にも大きな影響が出ている。約25頭を搾乳する千葉市の酪農家、金谷雅史さんは、連日の暑さで牛の乳量が落ちてきたと語る。「餌を食べる量が減って、ざっと1頭当たりの乳量が28キロから25キロ位まで落ちている印象です。もっと大変な農家もいると聞きますが、乳量が10%落ちると経営には打撃です」と話す。
さらに暑さ対策で電気代などの経費もかさむ。日中の牛舎内の温度は36度にも上がる。散水や扇風機で32度位まで下げているが、牛は24度を超すと体調に影響が出るといい、夜間も25度以下にならない日が続く状況に不安を募らせている。
「千葉県からいただいている1頭当たり1万5000円の補助金をすべて電気代にあてている感じです。毎年異常な暑さで、酪農仲間とは毎年夏の気温が1度ずつ上がっているのではないかと話しています」
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