基本法の検証・見直しを特集 食料・農業・農村白書 農水省2024年4月15日
農林水産省は4月12日の自民党の農林関係合同会議2023年度の食料・農業・農村白書の本文案を示した。特集は「食料・農業・農村基本法の検証・見直し」を取り上げた。
白書は現行基本法制定時には、想定していなかった、または想定を超えた情勢変化と課題に直面していると特集冒頭で指摘。世界人口の増加にともなう食料争奪に激化と気候変動による食料生産の不安定化、地球環境などに配慮した持続可能性への関心の高まりの一方、農村人口の急減による食料供給を支える力へ懸念など、「大きな歴史的転換点に立っている」と強調する。
そのうえで22年9月から審議会基本法検証部会での検証と取りまとめ、それを受けた基本法の今国会提出までの経緯をまとめ、今後20年を見据えた課題の整理と基本法の改正方向を解説している。
法改正によって食料安全保障の状況を平時から評価する仕組みを検討することにしており、参考事例として英国の例を紹介している。同国では2020年に法制化された「農業法2020」で食料安全保障に関する統計データの分析を含む報告書を議会に提出しなければならない。白書で農水省は英国の事例も参考にし、評価する仕組みを検討することや、食料自給率やその他の食料安保に関わる事項と目標を定め、毎年1回調査結果を公表する方針を明らかにしている。
そのほか、不測時に対応するため、今国会に提出して「食料供給困難事態対策法案」の概要も紹介した。
また、今後の食料の安定供給に確保について▽小麦や大豆、飼料作物など海外依存の高い品目の国内生産の推進、▽輸入促進は国内農業基盤の維持に不可欠との位置づけ、▽持続可能な食料供給には価格形成に「合理的な費用が考慮される」ことを明確化するなどの方針を解説している。
特集に続くトピックでは▽食料安保強化に向けた構造転換政策や地域計画の策定、▽物流の2024年問題への対応、▽輸出促進、▽農福連携、▽能登半島地震への対応など7つを取り上げている。
通常の編集面では食料自給率などの動向などを解説する第1章では国内で消費される食料をすべて国内生産するには、農地面積は3倍の1355万haが必要となるという試算を紹介し、過度な輸入依存から脱却を図るため小麦、大豆等の本作化とそのための水田の畑地転換の必要性をコラムでも強調している。
1章に続く2章は「環境と調和のとれた食料システムの確立」としてみどり戦略の推進や、気候変動への対応などを取り上げている。
担い手の状況については「農業法人の大規模化が進展」として、30ha以上の経営体数は2000年の1668経営体から2020年には6884経営体へと20年間で4倍になっていることなどをグラフで整理している。
一方、集落営農は137減少し1万4227組織となったが、法人化した組織が着実に増えている。
同時に大規模化、法人化にともなって雇用労働力の確保が課題となり、農水省では国内外からの人材の受け入れ体制整備、呼び込み・確保、育成までを一体的に支援することなどを紹介している。
白書は審議会企画部会でも議論されたうえ、5月下旬にも閣議決定される見込み。
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