水稲の斑点米カメムシ類 1道2府26県で注意報 病害虫発生予報第6号 農水省2025年8月7日
農林水産省は8月6日、令和7年度病害虫発生予報第6号を発表した。
主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)として8月1日現在、水稲は斑点米カメムシ類(イネカメムシを含む)の発生について1道2府26県で注意報が発表。四国、沖縄を除く全国の複数の地域で多くなると予想されている。また、豆類では、マメシンクイガの発生が、北海道及び東北の一部の地域で多くなる予想。野菜・花きでは、オオタバコガの発生が、北東北、北陸、東海及び近畿の一部の地域で多くなると予想されている。
今後も継続して気温が高くなる見込みであることから、病害虫の発生量の増加や発生時期の長期化により、農作物への被害が増えるおそれがある。
各作物の詳細は以下の通り。
◎水稲
水稲で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

<斑点米カメムシ類>
北海道、東北、関東、甲信、北陸、東海、近畿、中国及び九州の一部の地域で多く発生すると予想され、29道府県(延べ36件)から注意報が発表されている。同虫は、多くの種がほ場周辺の雑草に生息し、出穂期になるとほ場に侵入し穂を加害。被害の程度は、出穂期、ほ場への同虫の侵入量、カメムシの発生種の構成等によって異なるため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、ほ場の観察を行い、適期に防除を実施する。
また、地域の作型や斑点米カメムシ類の発生状況により異なるが、地域の実情に応じた防除を徹底し、さらに発生が多い場合には追加の薬剤散布を実施すること。
水田周辺雑草の除草は同虫の発生量の抑制に効果的だが、出穂期直前の除草は、同虫の水田への侵入を助長し被害を増加させるおそれがあるため、出穂期の10日前までに完了する。また、地域一斉で除草すると効果的。
このほか、斑点米カメムシ類に含まれるイネカメムシは、斑点米だけでなく不稔被害も引き起こし、令和6年度は37都府県で確認され、イネカメムシによる減収被害が生じた地域も報告されている。イネカメムシによる被害を防止するため、下記の取組を実施する。
・イネカメムシによる不稔を防止するには、他の主要な斑点米カメムシ類と異なり、出穂期に防除を行うことが重要。過去から発生量が多い、または発生量が増加傾向の地域では、不稔を防止するため、出穂期の防除を実施を。なお、高温によって出穂期が早まるおそれがあることから防除適期を逃さないよう注意する。
・イネカメムシは、斑点米も生じさせることから、発生が多い場合は、斑点米の発生を防止するため出穂期以降の2回目防除を実施する。
・一部では薬剤抵抗性個体が確認されていることから、同一系統の薬剤の連用は避け、ローテーション散布を実施を。
・イネカメムシは、稲を好んで加害する。防除が行われていないほ場(飼料用米ほ場等)、周囲より出穂が早い品種または遅い品種のほ場は、集中加害を受ける場合があるため、これらのほ場は発生に注意する。なお、イネカメムシの多くは、昼間は株元に潜んでいることから、早朝や夕方が見つけやすい。
<いもち病>
甲信の一部の地域で多くなると予想されており、長野県から注意報が発表されている。今後、断続的な降雨がある場合には本病が急激に発生するおそれがある。都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、水田の観察を行い、葉いもちの発生が多く、既に上位葉にも病斑が見られるほ場では、穂いもちに進展しないように薬剤散布を実施する。なお、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に効果的な薬剤による防除を実施する。
◎豆類
豆類で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

<マメシンクイガ>
北海道と東北の一部の地域で多くなると予想されており、北海道から注意報が発表されている。大豆の連作を行っているほ場では、ほ場外からの飛来に加え、ほ場内の越冬個体が発生し、発生量が増える可能性があるため、注意が必要。都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、発生を確認したらできるだけ早く防除を実施する。なお、同虫は薬剤抵抗性が発達しやすいため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定する。
◎野菜・花き
野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫と地域

◎作物共通
<オオタバコガ>
北東北、北陸、東海及び近畿の一部の地域で多くなると予想されており、富山県と滋賀県から注意報が発表されている。ほ場を見回り発生状況に注意しながら、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に、適期に防除に実施すること。また、結球野菜では、結球内部に食入した場合に防除が難しくなることから、結球前に防除を実施する。なお、同虫は薬剤抵抗性が発達しやすいため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定する。
◎ねぎ
<アザミウマ類>
東北、北陸および北九州の一部の地域で多くなると予想されており、富山県及び大分県から注意報が発表されている。ほ場を見回り発生状況に注意しながら、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に、発生初期から防除を実施する。なお、同虫は薬剤抵抗性が発達しやすいため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定する。
◎果樹・茶
果樹・茶で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域

◎果樹共通
<果樹カメムシ類>
北海道、東北および東海の一部の地域で多くなると予想されており、北海道、岩手県、秋田県、山形県、福島県から注意報が発表。今後、当年世代(越冬世代以降の世代)を中心に、餌を求めて園地を移動するようになる。今年の越冬世代の発生が多かった地域では当年世代の発生量に注意が必要。
同虫の飛来状況は地域や園地により異なり、果樹カメムシ類の被害を防止するためには、飛来初期の防除が重要。昨年は、ほ場の見回り頻度が少なかったため、飛来に気付くのが遅れ、被害が生じた事例が報告されている。都道府県の発表する発生予察情報等を参考に、園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施する。また、果樹カメムシ類は薄暮期から夜間を中心に活動するため、夕方の薬剤散布が効果的。
また、春の発生量が少ない地域においても、スギ・ヒノキの球果が豊富な場合、主要種であるチャバネアオカメムシおよびツヤアオカメムシが増え、秋の発生量が増加するおそれがあることから、警戒を緩めずに対策に取り組むことが重要。
◎なし
<ハダニ類>
南東北、四国および北九州の一部の地域で多くなると予想。徳島県から注意報が発表されている。ほ場を見回り発生状況に注意しながら、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に、発生初期から防除を実施する。なお、同虫は薬剤抵抗性が発達しやすいため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定する。
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