農政 シリーズ詳細

シリーズ:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す

【梶井 功 / 東京農工大学名誉教授】

2013.12.24 
(80)立法府の存在感示せ一覧へ

・農地バンク修正の意味
・決議ふまえ事業実施を
・国会の意思実現の年初

 特定秘密保護法案の強行採決につぐ強行採決で国会が大荒れに荒れた11月8日深夜の参議院本会議で、農地中間管理事業の推進に関する法律が与野党共同修正の上、成立した。

◆農地バンク修正の意味

 修正の主要点は「農業者等による協議の場の設置等」と題する次のような条文を第26条として加えた事である。

 1.市町村は、当該市町村内の区域における農地中間管理事業の円滑な推進と地域との調和に配慮した農業の発展を図る観点から、当該市町村内の適切と認めうる区域ごとに、農林水産省令で定めるところにより、当該区域における農業において中心的な役割を課すことが見込まれる農業者、当該区域における農業の将来の在り方及びそれに向けた農地中間管理事業の利用等に関する事項について、定期的に、農業者その他の当該区域の関係者による協議の場を設け、その協議の結果を取りまとめ、公表するものとする。
 2.市町村は、前項の協議に当たっては、新たに就農しようとするものを含め、幅広く農業者等の参加を求めるよう努めるものとする。

 政府提出の法案は、規制改革会議等の意見を取り入れて人・農地プランを法案には位置づけない法案になっていた。前々回の本欄で問題にしたように、「新規参入企業による“つまみ食い的優良農地の利用”で地域営農体制が崩壊するようなことがあっては、機構設立の目的である“農地の利用の効率化及び高度化を促進すること”と逆の結果をもたらしかねないことを危惧しなければならない」法案だったのである。“農業者その他の当該区域の関係者による協議の場を設け”る修正は、その点を改善したものと言えよう。附則第二条に第二項を加え、この“協議の場に関し、そのより円滑な実施を図るための法制上の措置の在り方について検討を加え…必要な措置を講ずるものとする”ことも5年後の対応として求めている。

◆決議ふまえ事業実施を

 人・農地プランは法定事項ではないので、法律のなかには国会修正でも一切出てこない。が、修正の意図がその活用を重視する点にあることは、15項目にもなる附帯決議の真先に

 “農地中間管理機構が十分に機能し、農地の集積・集約化の成果をあげていくためには、地域における農業者の徹底した話合いを積み重ねていくことが必要不可欠である。
 このため、人・農地プランの作成及びその定期的見直しについては、従来以上に強力に推進すること。
 また、人・農地プランと関連する各種予算措置についても、適切に確保するとともに、人・農地プランのより円滑な実施を図るための必要な法制上の措置の在り方について遅滞なく検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

を据えていることから明らかだろう。国会の農林水産委員会に参加している諸先生は、与野党を問わず、流石に規制改革会議の委員などとは違って“農業・農村の現場の実態”を踏まえての議論を重ねたようだ。附帯決議に盛り込まれた事項はいずれも私なども賛同する事項であり、農政当局はは今後の農地中間管理事業の推進に当ってこの附帯決議は十分に考慮してもらいたいと思う。附帯決議の最後はダメ押しとも言えるが、

 “アドバイザリー・グループである産業競争力会議・規制改革会議の意見については参考とするにとどめ、現場の実態を踏まえ現場で十分機能するものとなることを第一義として、制度の運用を行うこと。”

が附け加えられている。諮問会議を殊の外お好みの安倍首相も、与党の先生方もこの決議には賛同されていることをお考えいただきたいと思う。

◆国会の意思実現の年初

 この法案修正後の衆院農林水産委員会での附帯決議には“みんなの党を除く全会派が賛成した。決議に賛成した議員は「これは国会の意思だ」と強調”したという(11・28付日本農業新聞)。“立法府の存在感示す”と同紙は見出しを付けていたが、まさしくこの決議はそういう決議だった。
 “立法府の存在感示す”べき難問が1つ年を越している。TPP問題である。この問題について国会は、衆参両院とも農林水産委員会で“米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと…農林水産分野の重要5品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること”を決議している。この決議を守り、“立法府の存在感示す”ことが年初めに問われる。先生方の頑張りに期待したい。

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ