農政:真の地方創生に英知の結集をーJAの果す役割は甚大である-
第4回 5ポリス構想実現のために2016年11月9日
◆地方創生の5ポリス構想とその実現のための路線
そこで、以下順に5ポリスの内実と目指すべき方向の基本スタンスを述べておこう(別図参照)。

そこで、以下順に5ポリスの内実と目指すべき方向の基本スタンスを述べておこう。
「アグロ・ポリス」とは、いうまでもなく農業の拠点である。農業就業人口の減少、高齢化の急速な進展のなかで、旧来からの慣習にとらわれずにそれぞれの地域にふさわしい新しい地域農業再生の路線を構築しようという意図を込めてアグロ・ポリスを提起した。
集落営農の組織化、農地の地域の合意にもとづく効率的な集積を基盤にした法人化の推進、高齢者の技能を生かした「大小相補」の路線の強化、土地利用型部門の徹底的合理化と新たな集約部門の導入とその組み合せ、「老中青婦」の新しい結合と組織化など、私がこれまで調査してきた先進地域の姿を集約すれば、ここに示したような路線がすすめられており、こういう新しい方向性を示すのが「アグロ・ポリス」の姿である。
「フード・ポリス」とは、多彩な農畜産物あるいは林産物、水産物の加工や農産物直売所をはじめとする販売戦略の開発、推進、展開など、私が25年前に初めて全国に向けて提起した「農業の6次産業化」の推進である。「地産・地食」を原点とするレストラン・食堂はもちろん、直売所活動も「地産・地消」の原点から、近年さらなる展開をみせ、消費者ファン、とくに都市のファンの求めに応じて「地産・都消」、その延長としての「地産・都商」へと進化している直売所もふえてきている。例えば、私が「農業の6次産業化理論」を発明した大分・大山町農協の「木の花ガルテン」は福岡市に3店、大分市に3店、別府・日田市などに各1店というように支店を出し、朝早く大山町本店から保冷車で高速道を走り、都市の消費者ファンの要望に応えている先進事例もある。さらに農産加工品も非常に多彩になり、伝統的な加工品はもちろん、現代風の多彩な加工品、さらには消費者の高齢化にも対応して持ち運びの容易かつ調理に簡便さらに保存性にすぐれた果物、野菜などのドライ・フルーツ、ドライ・ベジタブルが非常な勢いで伸びてきている。ここでは若者の先端技術と高齢者の伝統技術の結合がポイントになってきている。
「エコ・ポリス」とは、里地、里山の保全、農村景観の維持・修復、さらには豊かな水利・風力・太陽光などの自然資源の利活用を通じた現代社会にふさわしい生活・居住環境の整備、新しい時代にふさわしいグリーン・ツーリズムの実現などである。都市から人びとが訪ねてみたい、さらには住んでみたいと思える景観と環境を農山村につくろうではないか。
「メディコ・ポリス」とは、高齢化がすすむ農村に必要不可欠な医療・介護などの施設と、その多面的な活用をはかるための重層的なネットワークを実現することである。そのもっとも典型的かつすぐれた活動は、長野県の佐久総合病院を核としたそのシステムに学ぶべきことが多い。
もちろん高齢者だけでなく乳幼児をはじめとする子供たちの保育、教育の多面的・包括的なシステムの構築を通して次代を担う青少年の育成に全力をあげなければならない。
最後の「カルチュア・ポリス」とは、どの市町村あるいは集落においても存在する歴史的な神社仏閣、あるいはそこにまつわる多彩な伝統芸能などの文化遺産、さらには都会にはない長年受け継がれてきた伝統技術、伝統芸能、たとえば世界文化遺産とされた紙すきの技術、陶磁器にかかわる技術、多彩な木工技術等々、数えあげていけば無数とも言える技術あるいは技能、さらには各地で育まれてきた食文化など多彩な文化を日本のどの地域でも長年にわたり育んできたがその総体を指す概念である。それらに改めて現代の光をあてつつ、その伝統を将来に向けて生かす人材を都市から迎え入れるとともに、新しい時代にふさわしい農村・都市交流の拠点をつくりあげる必要があるのではなかろうか。
さらにいま一つ私の頭を離れない問題は、小・中学校の廃校が続いていることである。特に小学校は誰の胸にも年を取っても消え去らない灯であったはずである。全国各地でこの廃校を活かす活動が進みつつあるが、様々な取り組み、例えば、農産物直売所へ、あるいはソバ打ち道場へ、さらには木工技術の伝承施設へなど多彩な活かし方が各地で試みられている。全国各地でこの課題にも取り組んでもらいたいと念願する。
(シリーズ記事)
・第1回「農業の6次産業化」とは何か
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