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農政:バイデン農政と中間選挙

【バイデン農政と中間選挙】公表された脱炭素農業のパイロットプロジェクト【エッセイスト 薄井寛】2022年2月22日

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事業実施主体への補助金は総額1100億円以上

米国のビルサック農務長官は2月7日、「温暖化防止商品作物の新たなパートナーシップ」と名付けた脱炭素農業のパイロットプロジェクト(実証実験事業)の実施計画を公表。同日、農務省は総額10億ドル(約1150億円)に上る同事業の補助金申請手続等を明らかにした。

自治体・団体等による最長5年の長期事業

本事業の目的は、二酸化炭素の土壌中貯留などの温暖化防止策を実行して生産される農畜産物等(林産物を含む)の販路を開拓するため、各種のパイロット事業の実施主体へ補助金を支給し、脱炭素農業の推進と米国農業の競争力強化に資することにあるとされるが、そこには主に次のような特徴がある。

第一は事業の実施主体。補助金対象は農家ではなく、地方自治体(州・郡政府を含む)や農協・作物別団体等の生産者団体、企業、大学等の研究機関、小規模農家や黒人農家等のNGO支援組織など、広範囲に及ぶ。

農家は認定された事業主体が行う実験事業へ参加。自らのほ場で排出ガスの土壌中貯留などの成果を挙げ、その実績に応じた対価を事業主体から受け取ることになる。

二つ目は補助金の対象範囲の多様性だ。米国内の温室効果ガスの約10%が農業部門から排出されているだけに(表参照)、農務省が掲げる脱炭素農業の主な実践事例は被覆作物の植付けや不耕起栽培、効率的な施肥技術、家畜糞尿の管理、牛の体内メタンを削減する飼料の開発・普及に加え、湿地・草地管理や水田の中干し等の技術、排出ガス抑制の牧草・バイオ炭等の土壌改良剤の開発など15分野に及ぶ。

(表)2019年の米国における温室効果ガスの産業別排出割合

なお、補助対象の「温暖化防止商品作物」も穀物・油糧種子や青果物、綿花、牧草、畜産・酪農、有機作物、森林作物などほぼすべての農林産品を含む。

三つ目の特徴は補助額と事業の実施期間にある。事業計画の提出と補助金申請の受付は4月8日からと5月27日からの二回に分けて始まる。前者は1件当たり500万ドル(約5億7500万円)から1億ドル(約115億円)の大規模事業、後者は25万ドル(約2800万円)から500万ドル未満の小規模事業が対象だ。農務省は中小の家族農家や黒人農家などの少数グループの参加を促進しようとしている。

また、承認された事業は本年夏から実施へ移され、実施期間は1年から5年の長期に及ぶ(追加補助金無しの2年延長も可能)。

ただしビルサック農務長官は、「(現行の2018年農業法に代わる)2023年農業法の制定内容によって、パイロットプロジェクトの計画をより恒久的な事業とするか、あるいは内容を変更することもあり得る」との認識を示し、議会への配慮をにじませた。

補助金の10億ドルは農業融資等を行う農務省の商品金融公社(CCC)から支出される。CCC資金の運用は農務長官の権限で実行できるからだ。しかし、脱炭素農業を農務省の主要な事業へ発展させるには、23年農業法によって法的な枠組みと予算措置を確保する必要があり、議会との連携が不可欠なのだ。

最大の課題は農家への奨励金

「バイデン農政の目玉」、「新たな農業所得源」と喧伝された脱炭素農業。そのパイロットプロジェクトがようやく夏から開始するが、11月の中間選挙対策という本事業の政治的な狙いを含め、バイデン大統領の思惑通り進むのか。

「短期的には難しい」というのが筆者の予測だ。農家の最大の関心事であるカーボンプライシング(排出ガス削減価値の価格設定)を本プロジェクトは明示していないからだ。

排出ガスの取引価格となるカーボンプライシングを米国政府はまだ決め切れていない(カリフォルニアなどの12州は独自のシステムを運用)。そのため、農務省は実践農家の成果に対する対価の水準決定を自治体や農協などの事業実施主体の判断に委ねているのだ。

米国では一部の農業関連企業が農家の協力を得て脱炭素農業の実験事業を数年前から実施してきた。しかし、例えば被覆作物の植付けによる二酸化炭素の土壌中貯留に対する農家への対価はエーカー当たり20ドル以下(ha当たり5700円程度)だ。10ドル未満のケースもあり、多くの農業メディアは、「少なくても40ドル以上の取引価格が必要だ」とする農家の主張を報道してきた。

また、脱炭素農業は「手間暇がかかり、コスト高だ」、「収量が減る」、「(排出ガスの測定会社などの)中間業者がもうけるだけだ」などとする農家の不満がネット上で広まっている。

一方、いくつかの農業州では11月の中間選挙で与党民主党の候補の苦戦がすでに予想されている。万が一、民主党が連邦議会の上下両院とも多数を失うことになれば、脱炭素農業の推進に関する2023年農業法の枠組みも今回のパイロットプロジェクトの行方も不透明感を増すことになる。

こうしたなか、農務省のパイロットプロジェクトへ参加する自治体や農協などがどれほどの水準でカーボンプライスを設定するのか。農務省はパイロットプロジェクトを全米の農家と農業関係者へどう売り込んでいくのか。農家の反応と中間選挙への影響を含め、今後の大きな焦点となる。

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