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農政:バイデン農政と中間選挙

【バイデン農政と中間選挙】2023年農業法案の審議開始~気候変動対策が最大の争点か【エッセイスト 薄井寛】2022年3月23日

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米国連邦議会下院の農業委員会は2月2日、2023年農業法案に関する公聴会を開催。1年以上と予想される法案審議のプロセスが始まった。食料輸入国の日本はこの法案審議のどこに注目すべきなのか。

地域経済の活性化も焦点に

米国農政の基本的な方向を内外に示す農業法の改訂はほぼ5年ごとだ(現行2018年農業法の期限は23年9月末)。議会上下両院がそれぞれ作成した法案を両院協議会が一本化し、予算措置とともに両院で採決される最終法案へ大統領が署名して法律は成立する。

(表)現行2018年米国農業法の予算内訳(2019~23年度、注参照).jpg

法案審議に備え多くの農業団体は州レベルの組織討議を昨年秋から始めた。次期農業法に対する農業団体の期待やメディアの報道等を踏まえると、議会審議の主な争点は次の3点になると予想される。

① 農業法予算の76%を占める低所得者向けの食料支援策を今後も強化するのか。
② バイデン政権の看板政策である気候変動対策の脱炭素農業を推進する法的な枠組みをどう確立するのか。
③ ロシアのウクライナ侵攻で穀物・大豆価格が高騰する一方、燃料・肥料等のコスト増とインフレ高進、政府の直接補助金の減少などによって農家所得の低減が予測されるなか、農業所得政策を重視すべきか、地方の中間所得層の雇用増など総合的な地域活性化策を強化すべきか。

今までの農業法案の審議では、低所得者向けの食料支援の増大を求める民主党の都市部議員と、大規模農家に有利な農業融資や所得政策などの改善を求める共和党の農業議員が妥協することで最終決着が図られてきた。だが今回は、与野党の対立と与党民主党内部の分裂でその妥協は困難との予測がすでに報じられている。

背景にはバイデン大統領の支持率低迷や中間所得層の民主党離れなど、与党を取り巻く政治情勢の悪化がある。ロシアへの経済制裁を強めれば強めるほどインフレは高進し、11月の中間選挙では民主党が上下両院とも多数を失うとの悲観論が広まりつつあるのだ。

与野党の議席数が50対50で拮抗する上院の中間選挙(議員の3分の1改選)では、ウィスコンシンやノースカロライナなど8以上の農業州で民主党候補者が苦戦。下院(全議員改選)では15から20の地方選挙区で民主党候補が危ないとも伝えられる。

それだけに、都市部では貧困層への食料支援強化が必要性を増す一方、農村部への総合的な経済活性化対策も民主党の重要な選挙対策となる。同党内部での意思統一は容易でないのだ。

注目される脱炭素農業の推進策

このような状況のなか、農業州での再選をねらう与野党の改選議員が議員活動の実績を誇示するために農業法案のさまざまな関連法案を提出すると予想され、本年11月までに法案審議が一定の方向へ取りまとめられる可能性は低いと考えられる。

だが、こうした議会での法案審議には食料輸入国の日本として注視すべき課題があり、共有すべき施策もある。

第1は脱炭素農業の推進策だ。次の2点が注目される。
(1)ライ麦などの被覆作物の植付けによる温室効果ガスの土壌中貯留など、農家の排出ガス抑制推進策の中身(奨励金の水準など)
(2)土壌浸食の激しい農地などへ休耕補助金を支給してきた環境改善奨励計画(EQIP)の対象面積と補助水準の引き上げ(現在の穀物高騰を受け、EQIP による休耕地の部分的な生産復帰の案が浮上する一方で、気候変動対策として休耕補助の拡大・強化を求める声も強まる)

2点目は飼料穀物等の価格を下支えするバイオ燃料の増産対策だ(トウモロコシ由来のエタノールのガソリン混合率引き上げにつながる対策など、本連載3回目参照)。

なぜなら、次期農業法案にEQIP による休耕面積の拡大と併せ、トウモロコシ由来のエタノールと大豆由来のディーゼルの増産誘導策が盛り込まれれば、それは飼料原料の国際的な需給ひっ迫と高価格の恒常化をもたらすことになるからだ。

米国最大の農業団体とされるファーム・ビューローのデュバル会長は3月8日バイデン大統領へ書簡を送り、「バイオ燃料の生産増を促進し、・・国産燃料の増産によって国家の安全保障を強化する」よう求めた。

対ロ制裁強化の世論が高まるなか、共和党系のファーム・ビューローのこうした要求を与党民主党側も無視できないだろう。

注視すべき3つ目は農業資材のインフレ対策だ。農務省は3月11日、ロシア産肥料の輸入規制対策として「メイドイン・アメリカ肥料」の生産奨励策(総額2億5000万ドル、約290億円)を発表した。農村部の雇用促進策としてこうしたサプライチェーン対策が、自然災害対策とともに、農業法案の目玉になるとの観測も伝えられる。

最後の4点目は与党民主党が重視する中小の家族農業対策だ。なかでも、コロナ禍で深刻な打撃を被ったファーマーズマーケットの立て直しや(首都ワシントン地区での事例調査によると、2020年上半期のファーマーズマーケットの売上は前年同期比75~79%減)、中小農家への販売支援策(学校給食や都市部レストランへの契約販売促進)、過疎地帯での食品供給網の再建など、中小農家を巻き込んだ地域密着型の取り組みにどれだけ予算を増やせるかが注目される。

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