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農政:トランプの世界戦略と日本の進路

【トランプの世界戦略と日本の進路】危機に直面し気づく協同組合の価値(2) 国際ジャーナリスト・堤未果氏2025年8月18日

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日本政府は米国のトランプ大統領との間で幅広い対米輸出品目に15%の関税を課すことや多額の投資で合意したが、本当に決着したのか予断を許さない。トランプ大統領の狙いは何か。さらに農協をはじめとする協同組合をめぐる国際的な動きをどう見て、どう運動に取り組むべきか。今回は国際ジャーナリストの堤未果氏に聞いた。聞き手は久保田治己氏(食料安全保障推進財団専務理事)

グローバル資本主義が狙う「最後の楽園」

久保田 話は変わりますが、日本では米が上がって問題になっています。

堤 米価格は国内問題ではなく、その先の大きな流れにつながっている、入り口の一つですね。トランプ大統領を超越するもう一つ上の存在を思い出して下さい。大統領は変わっても、世界を一つの市場にと望む権力構造は変わりません。小泉進次郎さんが農相になってから「農協解体」のかけ声が復活しましたね。今年は2度目の国際協同組合年じゃないですか。あれはまさに危機感から出てきた揺り戻しです。協同組合についてはまさに久保田さんの分野ですが、この状況をどうご覧になっていますか。

久保田 グローバルに発達した資本主義が「成長の限界」に突き当った今、協同組合は数少ない、残ったマーケットです。日本政府はアメリカと「買収防衛策は不適切である」という約束文書を交わしているのですが、協同組合はそれ自体が買収防衛策です。絶対買収できないので。それを解除させる方策が「株式会社化」でした。規制改革会議農業WGでの約束文書には「規制改革会議の提言に従って、我が国政府は必要な措置をとる」と書いてあります。「措置」とは農協法を変えることです。そうした策略をカモフラージュするための、見せかけの「国際協同組合年」なんじゃないか、と私は疑っています。

 SDGsと同じですね。SDGsも誰も反対できない政策として登場し、企業マーケティングに逆利用されています。実はリサイクルできず環境破壊していた、などのような本末転倒な実態が分かるまでには時差がありますから、四半期利益という短期スパンの投資で利益を出せる。マスコミや政府の広告キャンペーンによって、善意がくすぐられ、賛同しやすい領域なので。環境保護のために......と、言葉は美しいんですが。

久保田 ところが「牛がゲップをすると温暖化ガスを出す」とか「水田に水をためておくとガスが出るから水を抜け」とか、どう考えてもおかしい。おかしいことをSDGsの御旗を使ってブルドーザーのようにやってくる。

協同組合のピンチとチャンス

 私たちはイメージに弱いですからね。でもがっかりすることはありません。例え企業寄りキャンペーンだったとしても、光が当たるチャンスであることには変わりありませんから。それをどう活かすかです。私たちの決断がこれから先の未来をいくらでも変えていかれますよ。

農協、漁協、生協などは、特に地方では生活の一部になってしまっているために、日常の中でそのありがたみを意識することはありません。空気や水と同じです。私は全国のJAから講演に呼ばれますが、各地で出会うJAの組合長さんは、みなさん本当に謙虚で控えめで素敵な方が多いです。島国ではそれが美徳でしたが、今やそこにつけこむように厚かましい外資がどんどん手を伸ばしてきているのは見過ごせません。

久保田 そこで国際ジャーナリスト、堤さんの出番なんですよ。

 もちろんです、大切な宝物を奪わせないよう、一緒に頑張りましょう。9・11テロ直後のニューヨークで、「ああ、もう昨日までの世界とは違う。これからは大事なものは自分たちの手で守っていかないといけないんだ」と痛感したことを昨日のように思い出します。危機に直面して初めて、その存在の大きさに気づくものがある。農協の価値もそうですよ。例えば「共済はなくなります」となると、私の周りのお母さんたちはみな困ってしまう。共済は何かあった時の素晴らしい「もやい綱」ですからね。昨今の、農協をめぐる悪質な報道には、ジャーナリストとして強い怒りを感じます。

久保田 例えば米の高騰で「犯人探し」がなされ、流通が悪い、いや全農が悪いと盛り上がりますね。

 今はお米、その前はワクチン接種、さらに前はマイナ保険証の問題。意図的に「犯人」を作り出し、それを叩く魔女狩りをする。これは効果があるんですね。スマホの弊害で一人ひとりがより近視眼的に自分のことしか考えない傾向が強くなっているので、仮想敵は非常に有効な形で真の敵から目をそらさせることができるんです。

農協が日本文化になじむ理由

久保田 協同組合はヨーロッパとアメリカですごく発達を遂げたのですが、それ以外では日本なんです。昔から田植えや稲刈りを一緒にするとか、用水路の掃除をみんなでするといった伝統が農村にあって、そこに海外から協同組合が入ってきて、「われわれも同じことをしてきたじゃないか」とすんなり受容されたのです

 日本にはすでに助け合い、お互い様の下地があったのですね。協同組合はまさに、「今だけ、金だけ、自分だけ」の新自由主義とは根本から相容れない世界。稲作なんて、株式会社化に最も向かない営みじゃないですか。自然の循環に沿って助け合う稲作文化は、日本人の伝統的価値と深くつながっているこの国の宝です。「白か黒か」「勝ちか負けか」の二元論、周りを蹴落として走り続ける競争社会に、多くの人が疲弊するのは当然の帰結でしょう。

「農業を始めたい」という若い人が増えているのもよくわかります。

デジタル化と新自由主義には親和性がありますが、私たち人間は生き物ですから、必ず自然に戻りたくなるんですよ。五感があるので、全身を使わないとやがてバランスを崩して壊れてくる。コウノトリと共生する兵庫県豊岡市の、生き物の宝庫みたいなあの水田を見に連れて行ってもらった時、ああ大事なものがここにみんな詰まっている、と心から思いました。

久保田 コウノトリが生きられる。ドジョウもいるから、ミミズも人も生きられるのだと思います。

堤 本当にそうですね。あの時、もう一つ感動したのは、JA但馬のみなさんに、「自分たち人間がこれを作った」という偉ぶった意識がまったく感じられなかったことです。「自分たちもこの生態系の中に居場所があって幸せです」という空気なんですよ。昨今SDGsキャンペーンなんかでよく使われる「共生」という言葉は、本来こういうことなんだなあ、と気付かされ感動したのを覚えています。本当は息を吸うように自然で、方法論ではなく「在り方」なのだ、と。

見えないけれどそこにいる、農協は「トトロ」のような存在

久保田 農協グループにエールがあれば。

 連日のJA叩きには怒りしかありません。でもこの状況をもっと長い時間軸で見た時、JAをはじめ協同組合という素晴らしい存在に、私たち日本人がどれだけ助けられてきたか、国民が覚醒する絶好のチャンスがきた、そんな過渡期だとも思うのです。

日本人の暮らしを隅々でそっと支えてきた農協は、「トトロ」のように、普段は見えないけれどちゃんといて、私たちを守ってきた大きな存在なんですよ。

価値あるものは狙われる。だから守らなくちゃいけない、一人はみんなのために、みんなは一人のために、は、私たちが人間性を失わないための、最後の拠り所になるのですから。

久保田 今日は史上初めて「農協トトロ説」を聞きました。それを糧に頑張りたいと思います。ありがとうございました。

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