農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
【対談】JAえちご上越 × 上越市 集落間連携で地域づくり(下)2016年10月17日
所得増へ「米+野菜」
営農組織づくり推進
上越市長・村山秀幸氏
JAえちご上越経営管理委員会会長・青木克明氏
――地方自治体の悩みは人口の減少です。地方を元気にするためにはどのような施策が必要だと考えていますか。
村山 上越市の人口は約20万人。5年間で6800人ほど減り、毎年1000~1400人の減少です。自然減の方が大きく、高齢化の影響がはっきり出ています。定住促進、新規就農の事業に期待しますが、農業は技術、投資、知識が必要で、一人前になるのはなかなか難しいところがあります。この10年で313人が新規就農しました。そのうち親元で後を継いだ人が100人、市内農業法人に就職した人が152人、その就職者のうち3分の2は非農家の出身者でした。地域おこし協力隊などの事業を含めて、本当に、地域の担い手を確保していくために、農地を守り、地域を守るためにいろいろな支援策を講じていますが、問題は受け皿としての地域にどれだけの体力あるかです。
平場の法人では雇用者としての受け入れはある程度可能ですが、山間部ではコミュニティに受け入れてもらうにはなかなか難しい面があります。誰でもいいという時代ではないと思いますが、難しさを理解して来てくれる人を大切したいと思います。また山間部では高齢者だけの世帯でも、独立した子どもの一人は大体近くに住んでおり、田植えなどを手伝っています。そうした関係性を前提にしたまちづくりを考える必要があります。
――農協の生産者部会が受け皿として最適ではないでしょうか。
◆ ◇
青木 そのように誘導しています。就農のための情報を得るには部会が最適です。農協としては、農協のTAC(営農経済渉外)が担い手育成の窓口に当たっています。JA子会社のアグリパートナーで雇って育てることも、これから必要だと考えています。
――JAえちご上越は准組合員数がかなり多くなっています。准組合員の利用制限が取りざたされていますが、どう考えますか。
青木 そこに困っています。都会の准組合員とは意味が違います。集落営農組織にすると農地を預けることになり、農地を持たないので正組合員の資格を失います。従ってこの10年間くらいで増えている准組合員の大半は、もと正組合員農家です。そうした人にガソリンスタンドや葬祭施設、福祉施設を使うなと言うわけにはいきません。信用や共済事業の利益を営農指導事業に使うことで総合農協として機能しているのです。
また、24支店の支店に協同活動委員会があり、支店長に権限を与えすべての組合員<CODE NUM=00A5>地域組織、住民を含めて、子どもの農業体験や親睦旅行など、地域活性化のための活動を展開しているのです。もちろん准組合員、員外の住民も区別ありません。こうした活動を外すと農協は銀行と同じになってしまいます。農協は職能組織ですが、地域の応援団でもあるのです。
村山 私が県職員だったころ、すでに今の農協改革に出ている問題がありました。農協改革は事業を分社化した郵政改革と同じだと思います。農協は信用事業をどう位置づけるかです。営農・農政だけでは成り立ちません。重要なのは農業者の生活を含め、みんなの福利厚生だと思います。それを、元農業者を含めた組合員の負託を受けてやっているのです。准組合員の問題は、農業の形態が変わってきた中で、ひとつのモデルとして考え、農協法上に位置づける必要があるのではないでしょうか。
――農協、行政のそれぞれの立場から、相手に期待することは何でしょうか。
村山 農協とは密接な関係があり、しっかりやってもらっています。農地中間管理事業に関する業務の受託や農地利用集積円滑化団体として、またマネジメント組織づくりなど、いろいろな形で関係をもってやってもらっています。ただ、われわれが農協に期待することが、国の制度改正と相反しかねないこともあり、そこが、現状にあわせてうまく回るようにしたい。地域づくりの担い手としての役割を期待しています。
青木 農協は情報が弱い。行政を通じて利用できる事業などを伝えていただきたい。平成13年に合併し、共乾施設などの更新時期が迫っています。補助事業に対する指導、知識、情報が必要です。また支店協同活動を中心に、市も一緒に地域を守る事業展開をやっている最中です。今後も共同歩調をとっていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
・【対談】JAえちご上越 × 上越市 集落間連携で地域づくり (上) (下)
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