農政:農業協同組合研究会 第28回研究会
JA改革の到達点を確認 所得増大へ資金面でも支援 農業協同組合研究会2018年12月11日
農業協同組合研究会(代表=梶井功・東京農工大名誉教授)は12月8日、東京都内で第28回研究会を開き、JA自己改革と次期JAバンク中期戦略について、JA全中、農林中金の報告をもとに意見交換した。JAの常勤役員や学者など、約80人が参加した。
JAの自己改革では、全中の比嘉政浩専務理事が報告した。同専務は、(1)販売品取扱高の拡大、(2)第27回JA全国大会決議(平成27年10月)の重点実施分野、(3)1円でも多く生産者手取りを確保する施策、(4)トータルでの生産コスト低減、(5)担い手経営体のニーズに応える個別対応について、自己改革の達成点と、モデル的なJAの事例を紹介した。
JAグループの共通目標である販売・取扱高は、平成26年の4兆3300億円が28年の4兆6900億円(26年比108%増)と伸びており、一定の成果が表れている。また生産者手取りの確保では、消費者への直接販売、作付奨励、買い取り販売など、何らかの方策を実施しているか、今後実施する予定のJAが7割を超えている。
具体的事例では三重県のJA鈴鹿が、茶・植木の複合品目として白ネギを導入して産地拡大を進め、北海道のJA道央は、敷島製パン(株)と共同プロジェクトを立ち上げ、国産小麦の販路拡大に成果をあげている。
コスト削減では、予約購買や低コスト、省力技術の普及や自己取り・直送等の取り組みがある。いずれかの方策を実施しているか、これから予定しているJAは8割超に達している。実施している方策では予約購買による価格のメリットを設定しているJAが最も多い。滋賀県JA東びわこは水稲の肥料成分の見直しや物流コストの見直しで、10aあたりコストを3割減らした。
担い手経営体への対応では、担い手に出向く体制を84%のJAが整備。改革初年度の平成28年に比べ7.4%の増加となっており、今後設置予定を含めると92%を超える。この分野では、静岡県のJAとぴあ浜松が29名の営農アドバイザーが145戸の農家に対し、3年で農業所得30%アップを目標に栽培提案書を作成し、成果をあげている。こうしたJAの取り組みに対し、比嘉専務は「課題ごとに整理し、JAグループあげて共同・連携して、横展開を図り、自己改革を加速化したい」と話した。
農林中金は、後藤彰三代表理事専務が、JAバンクの事業戦略を紹介した。同バンクは平成26年から5年間で、農水省の「農林水産業・地域の活力創造プラン」に連動するかたちで1000億円規模の事業を構築。
このプログラムの運営では全農・全共連・農林中金を中心とする事業連が、それぞれの事業を通じて、担い手の生産拡大・生産コスト削減に直接寄与する施策や、地域活性化に資する施策を展開している。
プログラムの内容は、(1)グローバルな食市場の獲得応援、(2)農畜産物の付加価値向上応援、(3)担い手の規模拡大等効率化応援、(4)地域活性化応援など、JAの自己改革を資金面で支援する仕組みになっている。
特に付加価値向上の応援では6次化ファンドに関し、系統共同出資で、ファンドを運営する農林水産業協同投資㈱に29億円を拠出、担い手応援では、全農などとの連携で農機具のリース事業(アグリシードリース)を展開し、農機具購入等の購入額639億円のうち約40%を助成している。
また、JAバンクは2019年度から21年度にかけての中期戦略を検討しており、改革に向けた農業所得の増大・地域活性化応援プログラムについて説明した。この中で後藤専務は、戦略策定にあたり目指すべき姿として、「組合員・利用者目線による事業対応の徹底」、「農業・地域に貢献する存在であり続ける」ことを挙げた。
そのための実践事項として、(1)農業・地域の成長戦略、(2)貸し出しの強化、(3)ライフプランサポートの実践、(4)組合員・利用者接点の再構築、(5)JA・県域一帯の変革実践に取り組むことなどを説明した。
(写真)JA自己改革の成果を確認した研究会
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