農薬:時の人話題の組織
【時の人 話題の組織】小池 好智(クミアイ化学工業株式会社・代表取締役社長) 農業を通じて社会に貢献2015年5月15日
農家に喜ばれる農薬提供
今年の3月30日にクミアイ化学工業(株)の社長に小池好智氏が就任するというニュースが届いた。なぜこの時期にという思いがあったが、4月1日に新入社員を迎えるときには新体制でという思いがあったと後で聞いた。常にアットホームな社風をもつ同社らしいあり方かなと納得もさせられた。そこで小池好智新社長に、これからの抱負などを早速聞いた。
「責任の重大さを日に日に感じています」と、小池好智社長は、クミアイ化学の社長に就任して1カ月を振り返った。
経営のトップに立つと全ての事柄で最終的な決断を求められ孤独感を持つことはないのかと聞いてみた。「研究開発本部、国内営業本部そして管理部門も経験し、社内には気軽に話ができるたくさんの仲間がいるので、彼らの力も借りて」、研究開発部門や国内営業部門でともに仕事をしてきた「石原前社長の意思を受け継いでやっていこうという使命感を強く感じている」という。
それは「お客様に喜んでいただける製品・技術・サービスを提供し、農薬を中心に農業を通じて社会に貢献する企業になること。
そして内部的には、明るく風通しのよい環境の中で、社員が熱意をもって働いて、仕事を通じて自己実現していける『日本一幸せな会社』を目指していく」ことだ。
(写真)小池 好智・クミアイ化学工業株式会社代表取締役社長
◆知恵を絞って新規剤開発
クミアイ化学は日本国内ではもちろん世界的にも注目されている農薬会社だといえる。
いま世界の農薬業界で開発されている新規剤は、世界的な規模で事業展開する数社の海外企業と肩を並べて、「メイド・フローム・ジャパン」が非常に多い。そうした世界的なビッグ企業に伍して世界をリードしている日本の農薬会社を代表する企業の一つがクミアイ化学だ。
なぜ、日本の農薬会社が世界のビッグと肩を並べて活躍しているのだろうか?
それは「知的集約型の創製活動をしているからだ」と、小池社長は答えた。その意味するところは、日本の農薬会社は、単に知識を活用する知能だけではなく、その知識をもとに、独自に、自分たちの発想・アイディアをモノにしていく「知恵を絞って研究している」からだ。
クミアイ化学に即していえば、「知恵を絞って、独自の発想」で新規化合物を創製しているケイ・アイ研究所と、その成果を評価する生物科学研究所の実績がノウハウとして蓄積されているから「ヒット率」をあげているのだと小池社長は説明する。
そのうえで、米国や豪州などの大規模農場で機械化された農業とは異なり、繊細な水田農業中心の日本では「いかに必要なものを、必要な場所に、必要なだけ、送りこめるか」というきめ細かな製剤設計が求められている。
◆5分で散布可「豆つぶ剤」
クミアイ化学では、かつて小池社長が所長を務めていた製剤技術研究所で、開発された化合物をいかに農業現場の使用方法に合ったものにするかという製剤研究がなされ、その中から「豆つぶ剤」とか「微粒剤F」といったクミアイ化学独自の優れた製剤技術が生み出されてきている。
例えば「豆つぶ剤」は、背負い動噴やヒシャクで散布できるだけではなく、ラジコンヘリだと1ヘクタールの田んぼは「わずか5分で散布が終わってしまう」というように、省力で軽量・簡単で環境にも優しい製剤法だということで、いま徐々に現場での認知度が高まってきている。
さらにクミアイ化学では、微生物農薬や微生物農薬と化学農薬を組み合わせたクリーンシリーズ。植物の持つ機能を解析して、環境耐性を付与したり、収量や品質を向上させるなどの新剤・新技術につながる取組みも始めている。
こうした新規剤や現場で使いやすい新製剤技術、新技術の開発を進めることで、農業を通じて社会貢献していく。大きくとらえれば、食料の確保と環境保全に貢献する会社にしていきたいと小池社長は考えている。
◆海外比率が50%目前
いまクミアイ化学の製品は海外での評価も高い。とくに、新規畑作用除草剤のピロキサスルホンは穀物の他、幅広く使用できるということで、現在、北米、豪州を中心に大きく売上が伸びている。また、既存水稲除草剤のノミニーは50か国で登録取得し、アジアを中心に広く拡販が進んでおり、「昨年度の単体における海外比率は42%となり、近々50%を超えると見込んでいる」。
イハラケミカルとの合弁会社を含めて、米国・ベルギー・ブラジル・タイ・韓国に販売・開発拠点をもつだけではなく、米国・ミシシッピーにはコーン、大豆、綿花等を研究する実証圃場もあり、日本からも研究員を派遣しているほか、ブラジルにも研究員を派遣し、耕種方法や土壌が日本とは異なる現地で、「さまざまな農業形態に適応できるようにしている」。
また、隣国・韓国ではクミカコーリアがピリベンカルブの韓国での開発を行い、今年から韓国での販売を介している。
◆農家を支援するJAの存在感
世界的にも高い評価を得ているクミアイ化学だが「基本的なベースは日本国内の農業」であることに変わりないと小池社長は強調する。「いま一番大事なことは、日本国内での食の多様化が進むなかで、安全・安心で、何らかの機能を付与したような農産物が求められる。そのときに産地として地域地域の特性を活かした農産物の産地化やブランド化がはかられる」ようになる。
そして、そこで重要になってくるのが、農家や大規模化していく生産者組織をサポートする組織である「JAの存在感」であり、その「営農指導的な役割に期待」したいと小池社長はいう。
すでにJAのTACと連携した推進・紹介にも取り組んでいるが、今後は、「JA組織が大きくなっているので、支所・支店との関係を強化するとともに、大規模農家や生産法人との接点を強めていくことが大事」だとも考えている。
◆日本一幸せな会社めざす
「クミアイ化学の新剤開発力と製剤開発力さらに微生物農薬などの新技術開発力を活かして、高性能で使いやすく省力化ができて環境にも優しい製品を、JAを通して全国の農家の皆さんに提供し、喜んでいただきたい」。
そのためには「全国の農家のみなさんのご要望を的確に把握する必要がありますので、ぜひ、ご支援をお願いします」とJAのみなさんや農家へのメッセージを語ってくれた。
そして最後に、農家・生産者のニーズに的確に応えた製品を開発し使ってもらうという循環によって、安全・安心で健康的な農産物生産を可能にすることで「農業に夢とロマンをもち、農業を少しでも強くすることに貢献し、食と農を担う企業としての存在感を示すことで、日本一幸せな会社」にしたいと、熱い思いを語った。
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