農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(77)【防除学習帖】第316回2025年9月20日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
36.シアノアセトアミド=オキシム
(1)作用機構:[U]不明
(2)作用点: サリチル酸シグナル伝達
(3)グループ名:シアノアセトアミド=オキシム/FRACコード[27]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低~中
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]:シアノアセトアミド=オキシム/シモキサニル(カーゼートPZ、カビナイス、ダイナモ、ブリザード、ベトファイタ-、ホライズン等各薬剤の1成分)
(7)グループの特性:
シモキサニルは、卵菌類(べと病や疫病)に高い活性を示す。浸透移行性を有し、予防効果と治療効果を併せ持つ。作用機構は、未だに解明されていない点が多くFRACの分類では作用機構不明となっているものの、菌体の呼吸系代謝経路のいずれかの部位とDNA合成径路のいずれかの部位の2か所に作用することがわかっている。複数の作用点があることから耐性菌の発達リスクは低いと考えられている。病原菌の菌糸伸長抑制や胞子発芽抑制などの作用により防除効果・蔓延防止効果を発揮する。卵菌類のうちピシウム菌には効果が劣ることもあり、シモキサニル1成分の農薬は販売されておらず、耐性菌発生防止対策や効果範囲の拡大のため他の殺菌剤との混合剤で流通されている。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するシモキサニルのリスク換算係数は0.316で基準年のリスク換算量は7.5トンである。リスク換算量総量に与える影響度は少ないことと、べと病や疫病に治療効果を発揮する貴重な殺菌剤であり、耐性菌が発生しやすい卵菌類の薬剤耐性発達防止対策として有益なことから、本剤は従来どおり使用する方が得策と考えられる。
(9)シモキサニルの農薬登録がある主要病原菌一覧
シモキサニルの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。 実際にはシモキサニルと他の殺菌剤との混合剤を使用することになるので、混合相手によっては対象病害が付加されることになる。ついては、実際の使用前には必ず製品のラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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