介護食品を低栄養解決のツールに2013年3月28日
農水省が医療関係者やホームヘルパー、学識経験者などを構成員に設置した「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」の第2回会合が3月26日に開かれた。
◆介護食品の認知を高めることが必要
今回は「介護食品」の製造事業者3氏が出席し、これまでの取り組みや課題についてそれぞれが発言した。
摂食回復支援食「あい?と」を製造販売するイーエヌ大塚製薬(株)取締役会長の石垣孝樹氏は、摂食嚥下障害者は、通常食を食べている高齢者に比べて必要なエネルギーやたんぱく質が摂取できていないといったデータを示し、低栄養の要因に食事形態の制限、合併症に伴う栄養素の制限、独居などを挙げ、低栄養解決のツールとなることが今後の介護食品に求められていることだとした。
介護食品を販売して15年目になるキユーピー(株)加工食品事業担当取締役の竹村茂樹氏は、年間1万件ある問い合わせの約5割が「どこで売っているのか」。寄せられる要望の多くは「メニューの種類を増やしてほしい」「近くの店舗に置いてほしい」「安くしてほしい」といったことだという。
現在の課題は、多品種・少量生産のため製造効率が悪くコストが高いことや、陳列店1店舗当たりの売上げが少ないため売場スペースが取りにくいこと。価格を下げ、種類を増やすには「1品の販売量が多くないと市場は成長しない。認知・啓蒙活動が重要だと感じている」と述べた。
◆「高齢者はやせた方がいい」は間違い
また、迫和子委員(日本栄養士会専務理事)から高齢者の食事形態が1年後の予後に影響を及ぼすといった報告資料が出され、栄養面の重要性を指摘する意見が多く挙がった。
迫委員は「在宅で低栄養にならないようにすることが大事。食事量が落ちてきたときや噛みにくくなってきたときにこそ利用するという認識が広まっていない」として、介護食品を利用するタイミングも普及・啓発する上で考えていく必要性があると述べた。
介護経験のある委員からは、「介護する立場になると“介護食品”を利用することに罪悪感がある」、「食べてもらうことで精一杯になり栄養のことはそっちのけになってしまう」、「全て手作りでなくても簡単な下処理だけは自分でやるというような提案で抵抗なく介護食品を利用できるように普及させていくことが大事。スーパーなどでも利用の幅をわかりやすく示してほしい」との意見があった。
迫委員は「食べてもらった満足感と命をつなぐことは別。一般的に高齢者になったらやせた方がいいという誤った認識を持っている可能性が強く、やせていくことに対する緊迫度が低い。この認識をどうやって高め、活用をすすめていくのか考えていく必要がある」と指摘。武見ゆかり委員(女子栄養大学大学院教授)は「食べる人の状態を適切に判断する“コーディネーター”が非常に重要。その仕組みづくりについて議論していくべき」と述べた。
次回第3回会合は4月下旬の予定。
(写真)
第2回「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」
(関連記事)
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