卵の物性機能に着目 新しい価値創造で研究成果 東京農大×キユーピー2021年6月8日
キユーピーは、東京農業大学に、2020年4月1日に開設した「キユーピー『エッグイノベーション』寄付研究部門」が2年目を迎え、初年度の主な研究成果と、2年目となる2021年度の研究テーマ・展開について報告。初年度は、卵の物性に関する研究を中心に、論文投稿3報、学会発表4件と、順調に成果につなげ、そのうちの1件は、日本食品科学工学会「令和3年度関東支部大会」で、学生ポスター研究発表で優秀発表賞を受賞した。
予備加熱の有無と温度による、卵白部の微細構造の違い(顕微鏡写真)
同部門は、卵の物性機能に着目することで、より豊かな食卓の可能性を科学的に解明し、おいしい料理や食品の創出を行うことを目的に開設。、卵白の泡立ち性改質、ゆで卵の新しいテクスチャー創出、卵白のゲル化性向上などについて研究している。
初年度の主な研究成果として、滝沢陸研究員による「予備加熱によるゆで卵の物性改変とその機構解析」は、日本食品科学工学会関東支部大会(令和3年度)、学生ポスター研究発表で優秀発表賞を受賞した。同研究では、おでんの具の一つであるゆで卵は、煮込むと卵白の部分が硬くなってしまうことを課題に行われた。研究では、まず90℃での本加熱の前の予備加熱の効果を調べたところ、66℃では卵白が硬くなり、74℃では卵白が柔らかくなることが分かった。さらに、74℃と90℃の二段加熱で調製した卵白を長時間煮込んでも、対照(本加熱のみ)と比べ硬化が抑制されることが分かった。今後は、この二段加熱の技術を商品化に生かすための実用性の検討をしながら、ゆで卵のほか、卵白を利用した商品への活用も検討していく。
また、「殺菌しても起泡性が落ちない卵白の開発」(中根和可奈研究員)では、卵白を殺菌すると、泡立ちが遅くなり、泡の容積が減少することから、添加物を使わずに、この課題の解決に挑戦。その結果、卵白に含まれるタンパク質の一種「オボムチン」を除去すると、殺菌しても卵白の泡立ちの速度は落ちず、泡の容積も減少しないことを発見した。
さらに、「澱粉添加による卵白泡沫の安定化」(阿久澤研究室4人)の研究は、時間が経つと一体化して潰れてしまう卵白の泡沫はについて、なるべく長時間、泡沫として安定させる技術の開発に向けて行われ、卵白にオクテニルコハク酸修飾した加工澱粉を添加することにより、卵白泡沫の安定性を向上させることを発見した。今後は、冷凍・解凍しても安定する泡の開発に寄与する、一つの要素技術として活用していく。
研究者で同社研究開発本部 プリンシパル・コーポレート・サイエンティスト 東京農業大学客員教授の半田明弘氏は「加熱凝固した卵白や卵白の泡のテクスチャーをより安定したものにすることができれば、よりおいしい食品を提供できる。一つの商品は複数の要素技術の組み合せによって成り立っている。本寄付講座では、鶏卵の食品加工機能を向上させるために、一段とインパクトのある要素技術を開発したい」とコメントしている。
キユーピー「エッグイノベーション」寄付研究部門は、2021年度の研究テーマとして、「卵白のゲル・泡の制御技術に関わる基盤研究」を研究の核に据え、そこから派生したテーマを深掘りするとともに、新たな分野にも挑戦する。
「エッグイノベーション」の研究風景
◎今後の深堀りテーマ
・殺菌しても起泡性が維持されている卵白の開発
・澱粉添加による卵白起泡の安定性向上
・酵素処理による卵白ゲル化性向上
・卵白タンパク質可溶性凝集体の性状把握
◎今後の新領域挑戦テーマ
・メタボリックシンドローム抑制卵白の開発
・卵白タンパク質と植物タンパク質による新規素材開発
・卵黄の変性を利用したマヨネーズの物性改変
・人工消化システムを利用した卵白生理活性ペプチドの探索
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