将来の不確実性を考慮 飢餓リスクと対応策を算定 京大、農研機構など2021年8月17日
京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎准教授、立命館大学の長谷川知子准教授、農研機構の櫻井玄上級研究員、国立環境研究所の高橋潔副領域長、肱岡靖明副センター長、増井利彦室長の共同研究チームは、気候変動によって極端な気象現象が増え、世界全体の将来飢餓リスクがどの程度増え、備えるための食料備蓄がどの程度追加で必要になるか明らかにした。成果は、28月9日に、国際学術誌「Nature Food」のオンライン版に掲載された。
左図:世界の飢餓リスク人口の推計。黒は現状気候を想定したベースラインシナリオ。赤、青はそれぞれ温暖化対策なしケースと温暖化対策を最大限実施したケースでCO2施肥効果を考慮しない場合。黄、水色はそれぞれのケースに対してCO2施肥効果を考慮した場合を表す
右図:2050年の頻度分布を表し、黒はベースライン、破線は中位値
気候変動は、極端な気象現象の頻度、強度と空間的広がりを増大させると予想され、将来の食料生産にとって重要な懸念事項となっているが、これまでの研究では食料安全保障は確率的に表現した極端現象を対象とはせずに、平均的な気候変動下の想定で分析されてきた。同研究グループは、作物モデルと将来の気候の不確実性を考慮に入れて、極端な気象現象が将来の食料安全保障に与える影響を推定。その結果、100年に1回程度しか起こらない稀な不作について解析すると、世界全体の飢餓リスクは、2050年において平均的な気候状態と比べて温暖化対策なしケースの場合で約20~36%、温暖化対策を最大限行い全球平均気温を2℃以下に抑えたケースで約11~33%増加する可能性があることがわかった。
南アジアなどの所得が低く、気候変化に脆弱な地域では、極端な気象現象が将来の食料安全保障に与える影響に備えるために必要な食料備蓄量は、現在の食料備蓄の3 倍に上るという。同研究は今後の温室効果ガス削減の重要性を再確認するとともに、温暖化した時に備える適応策の重要性も示している。
同研究は、社会経済的な変化のみを考慮し、気候が現状のままだと仮定したベースラインシナリオでは飢餓リスク人口は2050年に3億6000万人と推計。そこから「温暖化対策を行わなかったケース」、温室効果ガス削減を実施し「温暖化対策を最大限行ったケース」(いわゆるパリ協定の2℃目標相当)について飢餓リスク人口を推計した。この時、作物モデルや気候の不確実性を考慮に入れると、温暖化対策なしケースと最大限対策を行ったケースでの飢餓リスク人口の中位値は、それぞれ4億4000万人、4億人と推計された。また、2050年時点で100年に1度程度の頻度は稀だが非常に強い不作が発生すると、飢餓リスク人口は温暖化対策なしケースで6億人、温暖化対策を最大限行ったケースで5億3000万人となった。気候や気候への作物の応答に由来する飢餓リスク人口の不確実性は、温暖化対策なしケースでは温暖化対策を最大限実施したケースに比較して、大きくなった。
さらに、これらの100年に1度の頻度で発生する不作によって発生する追加的な飢餓リスク人口の増加を回避するために、追加的に食料備蓄がどの程度必要になるかを推計した結果、温暖化対策なしケースでは1億8000 万トンの穀類が必要。金額にすると340億ドルで日本円で約3兆8000 億円で、現在の世界全体の穀類の備蓄の約4分の1に相当する。また、南アジアでは現在の備蓄の3倍に相当することがわかった。
こうした結果は、温暖化の抑制に成功しない場合、貧困層に大きな被害が発生しうること、また飢餓リスクを抑えるために相応の追加的な適応策が必要であることを意味しており、温室効果ガス排出量を削減する緩和の努力や、今後顕在化してくる温暖化に備えて、国際協調等など温暖化に適応していくことの重要性を示唆している。
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