2050年度の国内エネルギー設備・システム市場規模 3兆9850億円に成長予測 矢野経済研究所2021年12月15日
矢野経済研究所は、国内のカーボンニュートラル、脱炭素社会を実現するためのエネルギー設備・システム市場を調査。2030年度および2050年度の水素、CO2フリーアンモニア、CCUS・カーボンリサイクル、再生可能エネルギー、蓄電池の各分野別のエネルギー設備・システム市場規模予測を公表した。

2015年のパリ協定では、産業革命前と比較した世界の気温上昇を2℃未満(努力目標:1.5℃未満)に抑制することが国際的な長期目標として設定された。近年では、パリ協定をさらに強化する2050年のカーボンニュートラル実現を目指す動きが欧米を中心に急速に広まったことから、日本においても2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを2020年10月に宣言した。
これに伴い国内では、「グリーン成長戦略」が策定されるとともに、「地球温暖化対策計画」の改定、「地球温暖化対策推進法」の改正、「第6次エネルギー基本計画」の策定等が行われ、技術開発のためにNEDOに「グリーンイノベーション基金」(2兆円)が設けられた。現状ではこれらの政策に基づき、先ずは2030年に温室効果ガス排出を46%削減する目標に向けて、官民挙げて革新的なエネルギー設備・システムの技術開発、社会実装、投資が進められている。
2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会実現のためには、新しい2次エネルギー供給形態として「水素」と「CO2フリーアンモニア」が必要であり、それらを脱炭素化するとともに排出されたCO2を有効利用する「CCUS・カーボンリサイクル」技術が必要である。また、脱炭素化したグリーンな1次エネルギー供給として「再生可能エネルギー」(再エネ)が必要であり、再エネ電力を効率的に使用するためには「蓄電池」が必要。同調査では、カーボンニュートラルのためのグリーン成長戦略を背景に、水素、CO2フリーアンモニア、CCUS・カーボンリサイクル、再生可能エネルギー、蓄電池の各分野のエネルギー設備・システム市場を整理し分析した。
脱炭素燃料は、需要側で燃焼させても、CO2を排出しないとみなされる燃料。現在開発されている脱炭素燃料としては、表に示す種類と需要分野がある。日本において、従来からの化石燃料は海外に依存していることから、脱炭素燃料の普及はカーボンニュートラルだけでなく、エネルギー安全保障の観点からも重要である。また、脱炭素燃料は化石燃料と比較して、排出ガス中にSOX(硫黄酸化物)を含まないクリーンな燃料でもある。
脱炭素燃料の中でも、水素とCO2から製造される液体合成燃料(人工的な原油)は、化石燃料の石油と同等にエネルギー密度が高いという特徴も有していることから、モビリティ用燃料として有利。液体合成燃料を、再エネ由来水素から製造すれば「e-fuel」となる。また、液体合成燃料は、サービスステーション等の既存の燃料供給インフラや既存タンクを活用した長期備蓄が可能であることからレジリエンス性も高い。
将来展望
同調査では、 水素、CO2フリーアンモニア、CCUS・カーボンリサイクル、再生可能エネルギー、蓄電池の各分野において成長が期待されるエネルギー設備・システムを抽出して、それぞれの2021年度(見込)、2030年度、2050年度の国内市場規模を予測・合算して国内エネルギー設備・システム市場規模を推計した。各年度の市場規模は累積値ではなく、当該年度に国内市場向けに新規導入あるいは更新設置されるエネルギー設備・システム、設置工事費等を対象とした。
脱炭素社会を実現する国内エネルギー設備・システム市場全体では、2021年度(見込)の7250億円から、2030年度には2兆3430億円、2050年度には3兆9850億円に拡大すると予測。カーボンニュートラルの主役は水素であり、水素分野のエネルギー設備・システム市場は2050年度に合計1兆7400億円に拡大する見通し。また、水素やアンモニアを脱炭素化する共通基盤技術であるCCUS・カーボンリサイクル分野のエネルギー設備・システム市場も2050年度には4800億円に拡大すると予測する。
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