レモン果汁のマリネ調理 牛肉の肉質軟化と胃消化性に及ぼす影響を解明2023年8月29日
ポッカサッポロフード&ビバレッジと農研機構の研究グループは、レモン果汁のマリネ調理が牛肉の物性と胃消化性に及ぼす効果について研究し、肉質の軟化と、消化試験装置を用いた実験で胃消化性への影響を解明した。この結果は、日本食品科学工学会第70回記念大会で発表された。
レモンには、クエン酸、ビタミンC、ポリフェノールが豊富に含まれており、健康機能への注目が高まっている。近年、調理や飲用に使用される機会が増え、レモンを日常的に摂る人が増えているが、レモン果汁を調理に用いた際の食材の変化に関する学術的な報告や、調理した食事を摂った際の栄養成分の消化・吸収に関する報告は少ない。そこで今回、牛モモ肉をモデルとし、レモン果汁でのマリネ調理による肉質の軟化について検討。さらに、農研機構が有するヒト胃消化シミュレーター(GDS)を用いて胃消化性の向上について評価した。
◎研究方法と結果
①4mm厚にスライスした牛モモ肉を、レモン果汁100%液に1時間漬け込んだ(Lem100)。
②IH調理器を用いて未処理群(CTL)とLem100を同じ条件下で加熱調理。
<解析方法>
・構造的な変化:マッソントリクローム染色を用いて観察(肉汁の漏出などによる軟化の有無)
・物性の変化:テクスチャーアナライザーを用いて測定(圧縮の荷重などによる軟化の有無)
・胃消化性:GDSを用いて解析
<解析結果>
・構造的な変化:肉を加熱調理すると、タンパク質が収縮し、肉質が硬化することが知られている。
同研究の染色試験では、CTL群において加熱調理後に筋細胞の収縮および細胞外への肉汁漏出が認められた(図1)。一方、Lem100群では、これらの現象が緩和されており、加熱調理時に起こる肉の構造変化が抑制されていることを示している。
図1:組織染色像
・物性の変化:スライス肉サンプルを圧縮した際にかかる荷重は、CTL群と比べてLem100群の方が小さいため(図2)、Lem100群はCTL群よりも小さな力で破断することが明らかとなり、軟化に影響があると認められた。
図2:物性評価(サンプルの75%が圧縮された際にかかる荷重)
・胃消化性:各サンプル(60g)を用いてGDSでの消化試験を行い、開始3時間後に胃消化物をふるい分けた。ヒトの体内では、胃消化物は十二指腸以降でさらに消化され、胃から十二指腸へ向かって次第に細くなる管状の幽門部を通過する必要がある。そのため、幽門部を通過できない大きさの胃消化物は十二指腸へ移行しにくく、消化が進まないもの(未消化と定義)ということになる。胃の出口である幽門よりも大きいふるいの網目(2.36mm、3.35mmを使用)を使用してCTL群と比較した際、Lem100群では未消化分が約25%減少(乾燥重量ベース)していた(図3)。これは、Lem100群の方がより消化されたことを示している。
図3:GDSを用いて観察された消化挙動および未消化物の乾燥物重量
乾燥
以上の結果から、レモン果汁への漬け込みにより、牛モモ肉の肉質が柔らかくなり、胃での消化性も向上することが示唆された。また、実際の調理での活用時を想定し、レモン果汁とオリーブオイルを2:1の分量で作ったマリネ液での試験を実施したところ、同様の結果が得られた。
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