防げるか?エッグショック再来 クリスマス前、走る緊張 コスト増で産地苦悩2024年12月5日
卵の消費が伸びるクリスマスを前に、卵価格が高騰するエッグショックへの懸念が高まっている。背景には鳥インフルエンザの広がりがあるが、今年前半まで、産地はコスト割れに苦しんでいた。
大臣も危機感訴え
「鳥インフルエンザが大発生すれば、卵の需給や価格、国民の皆様方の食卓にも大変な影響を及ぼす。......危機感を共有して、できる限りの体制の準備を」
11月21日、全国から約500人の関係者を集めて開かれた緊急全国会議で、江藤拓農水大臣は鳥インフルエンザへの防疫徹底を訴えた。
12月3日には宮崎県で12例目
11月29日の定例会見では「足踏みぐらいの雰囲気になっている」(江藤大臣)と現状を評したが、12月3日には、宮崎県川南町の家きん農場で今シーズン国内12例目となる高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が確認された。
卵価上昇の背景
綱渡りのような緊張が続く中、卵価格は上昇している。卸売価格は2024年、1月平均の180円/キロ(JA全農たまご東京M基準)に始まり、3~7月まで200円/キロ前後で推移していた卵価はその後上がっていき、12月5日、290円/キロまで上がった。
1パック10個(サイズ混合)の小売価格も、7月8~10日には244円だったが11月11~13日には264円(平年比114%)となり、じりじりと上昇している(農水省食品価格動向調査)。
業界団体の担当者は「例年この時期に卵価は上がる。今年は暑さの影響で鶏がへばったのと、餌付け羽数が減ったために鶏卵の産量が減少し、9月から上がってきた。鳥インフルエンザは、令和4年の大流行、エッグショックが大きかったので、早めに(卵を)確保する動きも含め、卵価に影響しているのではないか」と話す。
米国では大統領選にも影響
米国でもHPAI(鳥インフルエンザ)の影響で卵価格が高騰する。米農務省チーフエコノミストのセス・メイヤー氏は、農水省農林政策研究所が12月4日に開いたセミナーで、「米国の卵市場はタイトで、需給のわずかな変動で価格が大きく動く。今は卵価が非常に高く、政治的にもセンシティブな問題になった」と語った。バイデン政権下で約2倍になった卵価をはじめ食品インフレは、大統領選でも議論になった。
24年前半は「コスト割れ」
日本では、今年前半は、生産資材高騰とも相まって再生産コストを割り込んでいた。2022年の鳥インフルエンザ流行で約1771万羽を殺処分した影響から23年は過去10年間で最少の生産量となった。24年に入り羽数は回復してきたが、消費が戻りきらなかったのが一因だ。
「出口である卵価と同時に、入口である生産コストも見てほしい。円安もあって飼料も油も高騰している。昔の感覚で『高い』と言われるととまどう」(前出・担当者)
「物価の優等生」というものの
卵は「物価の優等生」といわれる。だが、コストも人件費も上がるなか、卵価だけ「優等生」ではいられない。鳥インフルエンザの拡大を防ぐとともに、卵をめぐっても「合理的な価格形成」の検討が急がれる。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
小泉農相 随契米放出に「政策効果」 市場落ち着けば備蓄水準戻す2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JA秋田しんせい(秋田県)佐藤茂良組合長を再任(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JA北九(福岡県) 新組合長に織田孝文氏(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
宇都宮市に刈払機を寄贈 みずほの自然の森公園へ感謝と地域貢献の一環 JA全農とちぎ2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日