障害者ジョブコーチ成果報告会 一人ひとりに寄り添い現場支える戦力に パルライン2026年3月30日
パルシステムグループの物流を担う株式会社パルラインは3月20日、障害者就労を支援する「ジョブコーチ」による成果報告会を同社会議室で開催。生協宅配の基盤を担う現場で、職員一人ひとりに寄り添い、誰もが活躍できる職場づくりの実践を確認した。

「ジョブコーチ」は、障害のある職員が職場に適応できるよう、本人や周囲のサポートをする職員。現在パルラインでは12事業所に22人のジョブコーチが在席し、障害のある職員86人の業務や職場内でのコミュニケーションをフォローしている。成果報告会では、10事業所のジョブコーチがそれぞれの職場における支援の実践事例を報告した。
「会社を助けたい」意欲をフォロー
冷蔵品と青果をセットする岩槻センター(埼玉県さいたま市)は、障害者8人が在籍し、障害者雇用率3.89%。センターは恒常的な人員不足を派遣職員で対応し、定着につながらない課題があった。
そこで障害のある職員に、就業時間の延長を呼びかけたところ、2人が「会社を助けたい」と名乗りを上げた。障害の特性に合わせ新たな業務を切り出し、習得に向けた挑戦を1年かけて支援。他の職員の見本として活躍するまでのフォローを西巻貴弘ジョブコーチが報告した。
特性に合わせ担当業務を検討
青果の仕分けを担う岩槻青果センター(埼玉県さいたま市)は、障害者2人が在籍し、障害者雇用率2.99%。長期の直接雇用を目指すため、就労移行支援事業所のウェルビー株式会社の春日部センターと連携し実習生を受け入れている。
事前に職場を見学し、面談で興味を持った業務や苦手な作業など本人の特性を聞き取り、担当業務を振り分ける。覚えやすい業務から始めて自信を持ってもらい、一緒に作業するパート職員にも具体的な配慮事項を伝え見守る。毎日の面談で不安などを聞き取り、日報でのコミュニケーションを深めたことで職場の期待と本人の意思が一致し、直接雇用に至った。事例を飯田祐介ジョブコーチが報告した。
体調管理や生活リズムにも配慮
冷凍品セットの南大沢センター(東京都八王子市)は、障害者8人が在籍し、障害者雇用率は4.43%。統合失調症がある職員は、仕事の疲れで症状が悪化する場合があるため、主治医と連携し勤務体制を調整している。症状に応じ出勤日数を減らすなど雇用契約も変更し、本人が混乱しないよう個別の出勤カレンダーを作成しフォローする。
同居家族の長期不在で、本人が生活リズムの乱れなどの不安を抱えた時期には、服薬や食事、起床・就寝時間などを専用シートに記入してもらい、業務以外の心配ごとも聞き取りコミュニケーションを図った。個別の支援が自己管理の成功体験につながり、症状も安定して就労日数を増やすことができた。事例は宗石聡美ジョブコーチが報告した。
直接雇用から「1人工」に成長
ミールキットの「お料理セット」を製造する板倉食品加工センター(群馬県板倉町)は、障害者3人が在籍し、障害者雇用率は2.92%。2024年から就労継続支援A型事業所のハッピーデイズ(茨城県古河市)の指導員と利用者5人に野菜の下処理作業を委託している。2025年度は5時間勤務の週4日契約を週5日に拡大し、直接雇用も実現した。
直接雇用となった職員は、人参皮むき器の操作から清掃、コンテナ洗浄と入荷した野菜のコンテナへの入替作業をこなす。1日の処理が2000kgを超える品目もあり、柔道経験のある職員はまさに「縁の下の力持ち」として欠かせない存在。毎週の面談で次週の作業量目標を設定するなどフィードバックを繰り返し、日当たりの一人分の作業量をこなす「1人工」までに成長しました。事例は神宮宗弘ジョブコーチが紹介した。
「やめさせたくない」とともに支援
青果小分けを担当する相模青果センター(神奈川県愛川町)は、障害者15人が在籍し、障害者雇用率は12.44%。知的障害のある職員は、遅刻や仕事の好き嫌い、対人トラブルなど課題を抱えている。支援機関との面談や家族への協力依頼、毎日の約束の復唱を試みるが、改善できない。
そこで、本人が大好きなアニメキャラクターの紙芝居を作り、注意事項を物語にして伝えたところ、耳を傾けるようになった。1か月間無遅刻なら紙芝居を1枚プレゼントすると約束し、改善の原動力とした。
しかし行動は変わりきらず、次に問題があれば雇用継続が難しい状況に。対人トラブルの被害を受けた障害のある職員は「やめさせたくない」と話し、ジョブコーチとともに支援の立場に回り、チームとして連携しています。事例は古堅隼人ジョブコーチが紹介した。
派遣だよりから安定稼働へ
青果と冷蔵品セットの相模センター(神奈川県愛川町)は、障害者11人が在籍し、障害者雇用率は9.5%。恒常的人員不足の課題があり、青果品に畜冷材をセットする期間は派遣職員により稼働している。そこで相模青果センターが業務を委託する株式会社千手(神奈川県横浜市)の就労継続支援A型事業所への畜冷材セット業務の委託を検討した。
まずは千手の所長とリーダーが業務を体験して作業の可否や依頼人数、安全面や異物混入の対策などを確認し、リーダーを含む8人での稼働を開始。派遣職員は作業を最初から説明する必要があり、依頼しても当日キャンセルや早退など不具合だらけだったが、業務委託により稼働が安定し、メリットしかない。他にもセットラインへ通い箱を流す作業など、対応できる業務を拡大し、希望があれば直接雇用も視野に入れている。事例は中村武ジョブコーチが報告した。
在学時から寄り添い見守る成長
冷蔵品セットの熊谷センター(埼玉県熊谷市)は、障害者11人が在籍し、障害者雇用率は8.6%。2025年度は埼玉県立深谷はばたき特別支援学校(埼玉県深谷市)の卒業生2人を採用した。学校在席中に4回の実習を受け入れ、職場で困ったときに声をかけるキーパーソンを確認するなど、不安の解消に努めた。障害者就業・生活支援センター遊谷(埼玉県熊谷市)とも連携し、定期面談などで個々の成長に応じたスキルアップを目指している。
センターでは3年前から毎年、深谷はばたきの生徒が授業で制作した物品や農産物の販売会を実施。センター内の作業台や長椅子の制作も学校に依頼するなど、卒業生が働く現場との連携を構築している。事例は大貫智子ジョブコーチが報告した。
多様な業務経験し本人の希望も尊重
冷蔵品と青果をセットする新治センター(茨城県土浦市)は、障害者5人が在籍し、障害者雇用率は4.35%。センターでの障害者雇用に当たっての現場研修は、健常者と同じ工程で実施し、研修の過程で障害の特性に応じた配慮を確認する。
商品セットの作業が難しい場合は、物流器材を取り扱うエリアで7つの業務の難易度や対人関係の有無で、特性に合わせ配置。作業スピードや確認作業、判断能力や体力を要する業務もあるが、ローテーションで業務を経験し、本人の希望も尊重した配置により職員が成長している。事例は大里威治ジョブコーチが報告した。
別会社への正規雇用のステップアップも支援
カタログをセットする杉戸センター(埼玉県杉戸町)は、障害者10人が在籍し、障害者雇用率は13.71%。2025年度は埼玉県立春日部特別支援学校(埼玉県春日部市)の生徒の実習を3回にわたり受け入れた。作業の理解に時間を要するものの、分からないことは職員に確認し、集中してカタログ補充をこなす。本人も自分に向いている作業だと前向きな感想を伝え、4月からの採用につながった。
一方で、勤続19年の障害のある職員は、結婚を機に正規雇用で家族を養いたいとの希望から、別会社への就職を決めた。本人のステップアップのため、ジョブコーチや担当職員が相談に乗り、就職先の見極めなど支援した。事例は栗山高志ジョブコーチが報告した。
作業の事前練習で不安を解消
常温品セットの八王子センター(東京都八王子市)は、障害者10人が在籍し、障害者雇用率は5.44%。センターでの就労を検討する特別支援学校の生徒は、複数回に分けて実習を体験する。常温品を入れる折り畳みコンテナを組み立てラインに流す作業を担当するが、スピードが遅いと箱の間が空き商品をセットできない。
そこで稼働に影響しない練習用のラインを設け、落ち着いて作業を習得できるよう配慮。実習生が作業内容を忘れないよう手順書を作成し、達成度を判断するチェックシートを運用するなど工夫している。事例は山浦憂貴ジョブコーチが報告した。
事例報告を受け桑原修常務執行役員は「全社を挙げて本気で社会的包摂就労に力を入れてきた。行政の表彰なども受け、安心して働ける職場として社会からの認知向上つながっている。各事業所ともにレベルアップを確認できました。今後は正規職員としての障害者雇用も目指し、全社で皆さんのサポートをしていきます」と総括した。
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