【全農酪農部・服部岳部長に聞く】酪農基盤の強化・安定へ 広域流通整備で安定供給2026年3月30日
2025年に新たな「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(酪肉近)が策定され生産基盤の強化策などが示されたが、酪農の現場では生産資材価格の高止まりや酪農家戸数の減少、また、牛乳乳製品の消費低迷など厳しい状況が続いている。最近の需給動向やJA全農酪農部の取り組みを服部岳部長に聞いた。
JA全農酪農部 服部岳部長
牛乳など飲用等向け需要が低迷
――現在の酪農情勢や課題を教えてください。
Jミルクの需給見通し(2026年1月公表)では、2025年度の生乳生産について、上期は個体乳量の増加などを背景に北海道が前年を上回り全国で前年を上回りました。下期に入り2歳以上の乳用雌牛頭数の減少に伴い北海道も前年を下回ったことから全国で前年を下回りました。通年では全国で前年並みとなる見通しです。また、2026年度の生乳生産については、通年では北海道、都府県ともに2歳以上の乳用雌牛頭数減少の影響により前年を下回り、全国で前年を下回る見通しです。

需要面では、牛乳・乳製品の価格改定や他食品の価格値上げなど物価高騰の影響もあって、2025年度の牛乳、加工乳、乳飲料など飲用等向け需要は前年を下回る見通しです。2026年度においてもその傾向が続き、飲用等向けの需要は前年を下回る見通しです。
脱脂粉乳とバターの需給が跛行
飲用等向け需要が減少する中、2025年度は脱脂粉乳・バター等向けの仕向け量が前年を上回る見通しです。2026年度は生乳生産の減少が影響しその仕向け量は前年を下回る見通しとなっています。それでも脱脂粉乳の製造量が需要量を上回り在庫が期首を上回る見通しです。脱脂粉乳の需要は低迷が続いており、年間で2~3万トンの在庫の増加が課題となっています。
一方、バターは需要が堅調なため、需要量が製造量を上回って推移しています。同じ生乳から脱脂粉乳とバターが一緒にできるわけですが、こうした需給の跛行(はこう)性も課題となっています。
――全農酪農部の2025年度の取り組みは。
昨年の年末年始は過去最も需給調整に苦慮したと言われています。直近の年度末もそれに匹敵するレベルの状況です。現在、本会は、指定団体、乳業、関係団体、国などと連携しながら、協力乳製品工場の筑波乳業(株)や(株)弘乳舎で乳製品への加工処理をフル稼働で行うなど様々対応し尽力しているところです。
こうした乳製品工場は需給調整や乳価形成において重要な機能を担っています。昨年10月1日、全酪連、東北生乳販連、関東生乳販連、本会が共同で出資し新たな乳製品工場「らくのう乳業株式会社」を設立しました。現在、2028年9月末の新工場(福島県郡山市)完成にむけて、全酪連はじめ出資団体との間でひとつひとつ協議・決定しながら取り組みを前に進めているところです。
また、脱脂粉乳の在庫が過剰となる中、Jミルクが事務局となって、全国の酪農家と乳業の基金と国の助成を活用して飼料向けなどの輸入脱脂粉乳との置き換えによる在庫削減に取り組んでいます。本会グループ会社の(株)科学飼料研究所でも輸入脱脂粉乳からの置き換えをおこない、国産脱脂粉乳を使用した製品の製造に取り組んでいます。
一方、夏場など需要期に北海道から都府県へ生乳を安定的に輸送するため、従来の茨城県に加え兵庫県・岡山県にも新たに生乳のストックポイントを設置してリレー輸送することで北海道のローリーの回転率を上げるなど輸送体制の強化に継続して取り組んでいます。
また、協同乳業(株)を中核として、酪王協同乳業(株)、日本酪農協同(株)の本会グループ乳業子会社と連携し牛乳中心に製造・供給する体制整備に継続して取り組んでいます。
異業種連携を強化
本会は、農林水産省とJミルクが2022年6月に立ち上げた「牛乳でスマイルプロジェクト」に参加し、他の参加企業と一緒に牛乳・乳製品の消費拡大に取り組んでいます。
この枠組みの中で、ネスレ日本(株)と連携し、コーヒーポーションを牛乳に入れて味の変化を手軽に楽しめることを若い世代の方を中心に牛乳を飲むキッカケ作りとしてチャレンジしました。また、日比谷Barと連携し、牛乳入りのカクテル4種類を開発・提供してもらい、お酒と牛乳の相性の良い飲み方を大人向けにも提案しました。
農協牛乳を使ったカクテルを提供(コースター付)
最近では、3月6日9時(369=ミルクの日時)に自由が丘の「MILKLAND HOKKAIDO→TOKYO」において、本会営業開発部が進めるニッポンエールプロジェクト第7弾の北海道酪農応援企画のプレス発表をおこないました。当部もこれに参画、ホクレンと連携し、協同乳業(株)をはじめニッポンエール協議会参画企業と、牛乳・脱脂粉乳などを使用した各社の新商品発表や酪農情勢について、幅広い層へ訴えることができました。
今後も当部だけではなく営業開発部はじめ他部門やグループ乳業、外部の企業や団体と積極的に連携し、消費者の方に牛乳・乳製品をもっと食べて飲んでもらうキッカケ作りに継続して取り組みます。
――全農酪農部の役割や2026年度の重点、酪農部として目指すことは。
日本は食料の多くを海外に依存しており、食料の確保は海外事情に影響を受ける不安定な状態にあると思っています。これからも栄養価が高く美味しい牛乳・乳製品を消費者の方に届けるためには、国内酪農生産基盤の維持・強化が不可欠と考えています。本会は酪農家の方が安心して経営継続できるような環境作りを目指して引き続き取り組んでまいります。
まずは、全国の生乳の生産と需要を的確に把握し、指定団体と連携して最も乳価の高い飲用需要の最大化に努めます。また、広域流通生乳を安定供給するため、グループ会社などと輸送課題にも引き続き取り組みます。
また、冬場など不需要期には生乳を乳製品に加工処理する体制を確保するため、筑波乳業などとの連携を維持・強化するとともに、らくのう乳業(株)の新工場建設にむけて全酪連はじめ出資団体と連携しながら前にすすめていきます。
また、協同乳業(株)を中核に本会グループ乳業子会社との連携を強化し、牛乳を中心とした生乳の需要拡大にむけて商品の製造・供給などの体制整備を一層すすめていきます。
この他、製品価格値上げもあって、缶コーヒーなどの販売が減少する中、業務用牛乳の製造・輸送体制の効率化と販売強化に取り組みます。また、脱脂粉乳の在庫削減にむけて特に牛乳・脱脂粉乳の理解醸成・需要拡大の取り組みによる消費拡大のキッカケ作りを継続しつつ、本会飼料関係子会社での利用にも継続して取り組みます。
そして全国の多種多様な酪農家が経営を継続できるよう、こうした取り組みを強化、深化していきたいと考えています。
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