【JA運動と広報戦略座談会】現場の情報共有と発信へ 農業理解醸成の先導役に(2)2026年3月30日
第30回JA全国大会決議は広報戦略を「五つの取組戦略」の一つに位置付けた。単なる情報発信にとどまらず、食と農への理解を深めJAファンを広げていく「望ましい関係構築」としての広報は、どうしたらできるのか。現場で先進的な挑戦を重ねるJA金沢市の三原千明ふれあい相談課係長、グループの広報戦略をリードしてきたJA全中の元広菜穂子広報部長、トップ広報の重要性を体現したJA鳥取県中央会の栗原隆政会長が、自身の体験を交え「これからのJA広報」を話し合った。
愛と推し活 想像力大切
栗原 男女共同参画の時代ですが、「愛」という言葉が出るのはさすが女性だなと思ったのと、広報担当者は女性に適性があるのでしょうか。
元広 女性が多いのはたまたまで、対象への愛や想像力がある人が向いているのではないでしょうか。
トヨタも打率3割
栗原 なるほど、わかりました。三原さんはどうでしょう。
JA金沢市ふれあい相談課係長 三原千明さん
三原 愛と推し活はわかりやすいたとえですね。人々の生活圏にどんどん入っていき、グッズを身につけてもらったりイベントに来てもらったり。「その先がJA」というのは本当に難しいですが、私たちの強みは「食」、特に「国産」で、そこに愛を持ってもらい、推しの野菜を見つけてもらう。各地域からの「推し」の野菜を農家側も出し、マッチする消費者を探していく。それをJAグループの広報が進め、発信しあうことで情報が互いに響き、JAグループ全体が世の中に見えるようになれば、それがゴールかなと思います。ただ、現場は一つひとつ大変です。一つの企画をしたりPRをしても、本当に年何回、組合員や地域の人たちの目に留まるか。
元広 運不運もありますよね。「明日の朝刊の1面トップかな」と思えるいいネタを出しても、大きな事件や事故が起きれば取り上げられなくなる。そこでがっかりしないで、発信し続けるしかないですね。
三原 災害もいつ起こるかわからないですし。これだ!と思うものの扱いが小さかったり、逆にそれほどでないものがドーンと扱われたり。
元広 「リリースを出してもまったく取り上げられないんです」みたいな話はよく聞きますが、ある会社の方から「あのトヨタでさえ3割バッターになれるかどうかだ」と聞きました。リリースを10本出した内、3本が話題になるかどうか。だから何度か取り上げられなくてもあきらめずに頑張りましょう、ということだと思うんです。
栗原 農業県の場合は、JAのリリースを県内のマスコミが比較的取り上げてくれますね。
元広 関係する人口も多いですし。逆にそうでない東京とかで取り上げてもらうことが課題です。去年の「米騒動」みたいな時は、消費者にも「自分事」になりますが。
"仮想"でなく対面で
栗原 組合員との情報共有、対内広報も重要ですね。
三原 対内広報はとにかく組合員に耳を傾ける。日々畑にうかがって。
栗原 毎日?
三原 そうですね。毎日、誰かしらのところはほぼ行ってますね。行けば農家さんから何かしら話が聞けますから。共同利用、共販をしている農家はJAを必要とし、JAがあるから自分たちも潤っているとおっしゃってくださるので、足しげく通います。座談会だったり地域懇談会でも文句を言ってくる人の方が多いくらいですけど(笑)、それだけ愛してくれてるんだなというのがわかりやすいというか。
栗原 自分の方から積極的に出かけていくというのは素晴らしいですね。JA全体でみても人数が減って、農家に行って話をする機会をなかなか作れません。最終的には組合員の事業活動参加が重要で、JAのことを広報するだけでなく、組合員の情報を組合員に知らせることが重要だと、以前の「農業協同組合新聞」鼎談(ていだん)で長野県JA松本ハイランドの田中均組合長が話されていてなるほどと思いました。
元広 共済だったり金融だったり、事業広報も重要です。理念をいくら言ってても事業収入がないとJAも成り立たない。そこは全中が弱いところで、事業連さんが主導しています。
人材確保にも一役
栗原 職員との情報共有、エンゲージメント向上、リクルートも広報の課題ですね。
三原 採用難の中、私たちは去年くらいから採用、リクルートに本腰を入れているところです。リクルート系の広報は、自社を何でも良く見えるようにしか発信しない傾向がありますが、度が過ぎると「入ってからの現実とのギャップ」から退職につながることもあります。そこで、なるべくリアルな形で発信して、入ったばかりの若手職員の姿を出してそれに共感してくれる人に入ってきてもらうようにと考え、インスタグラムのリールという動画ツールで「若手職員の1日」を配信し、それが45万回再生されました。採用面談では、「当JAのSNSは見ているか」を聞き、フィードバックをもらっています。私たちの広報がどう動けばいいか物差しになるように。この部分はまだまだ結果を出せていないので、注力していきます。
JAらしさ 対話を柱に
栗原 45万回再生とはすごいですね。発信内容という点ではどうでしょうか。
三原 「世の中の動きとJA」を考えています。たとえばお米ですが、金沢ではお米があふれているので値下げをPRしました。ただ値下げだけだと生産者は困るので、「生産者と消費者との溝を埋めていかないといけないね」という話をしています。共済金融と農業のつながりも、他の金融機関にはない「JAらしさ」なので、そこを総合事業としてPRすることにも力を入れ、子ども向けに「農協からお金を下ろして金沢産の野菜を買うイベント」をしました。それを体験する子どもを見て親御さんが「JAってこういうことをしているんだな」と立体的に感じてもらえます。よりわかりやすく届けられるような広報の仕方を追求しています。
トップの理解不可欠
JA全中広報部長 元広菜穂子さん
元広 何を発信するか。職員と役員とが違うことを考えているとうまくいかないので、「どうしますか」「何がポイントですかね」と広報担当と役員とが話すことが大事です。そもそも論に戻りますが、広報戦略って作るのが大事なんじゃなくて、「どう思います会長、組合長?」と経営者の考えを広報担当として引き出さないといけない。広報担当だけで書こうと思えば書けるでしょうけど、それがトップの思いと違ってたらやる意味はないし、やっても届かないかなと思うので、トップとよく話すのが広報戦略の肝だと思います。
栗原 私も組合長時代、広報には力を入れ、担当者とよく話しました。広報担当者は経験年数の浅い職員が配置されることが多く、取材先などをアドバイスすると取材に行き、今度は記事内容を見て、ただ単に現象として捉えるのではなく、多様な角度から背景、ストーリー性をもたせるよう助言しました。わりと密な関係になりましたが、ほかのJAでは、必ずしもそうはなっていないところもあるように思います。
元広 日本広報学会という学会では数年に1回、「広報の定義」を作っているのですが、最新の定義では「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である」とされています。経営者の仕事の大きな一つに広報があるんですね。
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