日本のコメは旨いか【森島 賢・正義派の農政論】2026年3月30日
●コメ輸出政策は幻想
日本のコメ輸出政策が、「攻めの農政」という勇ましい名前で、30年前から続けられている。しかも、30年間もの長い間、コメ政策の主柱に据えている。
前稿(https://www.jacom.or.jp/column/2026/03/260323-88220.php)では、アメリカ農務省の Rice Yearbook を資料にして、この政策が成功してきたかどうかを見てきた。結果をみると、最近2024年の日本の輸出実績は、世界の全輸出量の僅か0.15%でしかない、しかも、最近増えてもいない。そうした惨めな失敗だった。
また、前々稿(https://www.jacom.or.jp/column/2026/03/260316-88106.php)では、稲作の大規模化をコメ政策の基本に据えたらどうなるかを見てきた。その結果は、コメ生産の縮小であり、食糧安保の崩壊であり、国家としての独立の放棄である、とした。
それでも、高市早苗内閣は昨2025年4月には、輸出量を2030年までに8倍に増やすという閣議決定をした。努力すれば出来る、と考えているのだろう。そして、今でもこの幻想を追っている。
努力すれば、何でも出来るのなら、科学はいらない。
●日本のコメは旨いか
日本のコメが、世界中から好まれて輸出できるようになればいい、と誰もが思っていることだろう。世界中から好まれるには、旨くて安くなければならない。市場は厳しい。
本稿では、日本のコメは旨いか、という点を焦点にして考えよう。
日本のコメは旨いか、と聞かれたら、大多数の読者諸兄姉は旨いと答えるだろう。筆者も旨い、と答える。
しかし、国際市場では、多くの人は、そのようには答えないだろう。
国際市場での評価は、下図の通りである。

●味覚の民族性
コメの味覚について考えよう。
コメに限らず、味覚には客観的で絶対的な尺度はない、というのが筆者の見解である。
では、コメの味覚は何で決まるか。
コメは、東アジアでは1万年前から主食である。1万年もの長い間、今からみれば拙い方法ではあるが、品種改良を重ねてきた。
主食だから、改良の目的は、何よりもカロリー生産量の多いものを重視した。それに成功すれば、大勢の子供たちを飢えさせることもなく、元気に育てられるからである。
このとき、食味は二の次である。仮に旨くなくても生産量の多いものを重視する。そして、1万年もこうしたことを続けていると、いま食べているコメがいちばん旨いと感じるようになる。毎日毎日不味いと思いながら食べるのは、憂鬱だからだろう。
●味覚は風土で決まる
このように、東アジアのばあい、その土地の風土に適合して収穫量の最も多いコメが主食になり、最も旨いコメになる。
欧州のパンの場合も同じである。フランス人は、フランスの小麦で作ったフランスパンが、世界中で一番旨いという。ドイツ人はドイツのライ麦で作った黒パンが、世界中で一番旨いという。これは、愛国心の発露だけではないだろう。土地の人口扶養力の一番大きいものが主食になり、一番旨い、と評価されるのである。そのように味覚は風土が作るのである。
そうして、旨いコメを育ててくれた風土に感謝しながら食べているし、風土を利用しながら旨いコメを作ってくれている農業者に感謝しながら食べているのである。
●コメ輸出政策の認識不足
しかし、日本のコメは世界中の誰もが、世界中で一番旨いと思っている、と勘違いしている評論家は、少なくない。輸出すれば、旨いのだから、少しくらい高価でも売れるというのである。輸入国にも高所得者がいるから、彼らなら買うだろうという。国民の多くの所得が増えれば、どんどん売れるだろう、いうのである。
だが、そうではない。高所得者ほど、高所得者だからこそ、食味を重視して旨いコメを食べるだろう。彼らにとって、旨いコメは日本米ではない。彼らが生まれ育ってきた風土の中で作ったコメが、一番旨いのである。輸出論者には、この認識がない。貧乏だから不味いコメを我慢して食べているのだ、という認識である。
「井の中の蛙」とは、こうしたことを言う。
昨年4月の閣議決定も、この認識のもとでの決定だろう。
コメ政策の1つとして、コメ輸出を考える、という程度なら、容認する人もいるだろう。だが農政の主柱として、コメ輸出を掲げることは、国民を欺くものである。
(2026.03.30)
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