カンキツグリーニング病、手軽に診断 農研機構2014年12月12日
農研機構果樹研究所はカンキツ類の難防除病害であるカンキツグリーニング病を、簡単でより早く、低コストで診断できる新たな検定法を開発した。
カンキツグリーニング病は世界中のカンキツ類主産地で猛威をふるっている難防除病害だ。罹病すると収穫量減、生育不良、品質悪化はもとより、樹も枯死してしまう。ミカンキジラミや、接ぎ木によって媒介され、国内では奄美大島以南で発生が確認されている。
感染拡大を防ぐためには感染樹を伐採する必要があるが、従来は、各樹体からDNAを抽出して精製して診断するPCR法という手段しかなく、この方法では時間と労力がかかる上、試薬や有機溶媒などを使うためコストや安全面での問題もあった。
今回、農研機構が開発したのは、DNA抽出が要らないダイレクトPCR法という技術だ。カンキツグリーニング病の病原菌が高密度に存在する葉の葉脈の一部を使い、細断、すり潰すなどしてできた試料を診断するやり方だ。専門技術は不要で、使う機器も少なく、従来は1サンプル作るのに約300?700円ほどかかっていたが、これが160円程度で済む。また作業時間も、16サンプル作るのに約60分と、従来の2?3分の1の時間で済む。
農研機構では、この技術を用いれば病気の発生地でも多数の樹体を容易に検定することが可能となるため、「感染樹の早期伐採と蔓延防止に大きく貢献する」と普及に期待している。
また、この検定法は他の病害でも利用できる可能性があるため、「さらに改良を重ね、さまざまな病害でも有効だということを検証する」とコメントしている。
(イラストはダイレクトPCR法のスキーム。検査する葉の中肋部(葉脈の中央の太い部分)を細断した試料を、市販のミニホモジナイザーチューブを用いて磨砕・遠心し、沈殿物を滅菌水で懸濁したものを鋳型としてPCRを行う)
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