カリウムの施肥量を抑えた水稲栽培 土壌中の難分解性炭素を蓄積 農研機構2021年7月21日
農研機構と龍谷大学は、カリウムの施肥量を抑えて多収イネを栽培すると、分解しにくい難分解性の炭素が土壌に蓄積することを発見。イネのカリウム施肥を制御することで土壌への難分解性炭素の蓄積を人為的に促進できる可能性を示した。新たな地球温暖化対策の開発につながると期待される。
地球温暖化対策として、堆肥などを農地に施用して土壌中に積極的に炭素を蓄積させようという試みが推進されている。しかし、堆肥等は微生物等により分解されると、最終的には二酸化炭素となって大気に放出されるため、炭素は土壌に長期間蓄積しない。
アルミニウム等と結合した炭素(難分解性炭素)は、微生物により分解されにくく、数千年にわたって土壌に蓄積するが、このメカニズムはわかっておらず、土壌に炭素を貯める技術を開発するには、土壌中で難分解性炭素が形成・蓄積されていく過程を明らかにする必要がある。
多収イネとコシヒカリ栽培水田における難分解性炭素の推移
そこで、農研機構と龍谷大学は、水田を対象に研究を実施。カリウムの施肥量を抑えて多収イネを栽培すると、土壌中に難分解性炭素が形成・蓄積されることを明らかにした。カリウムの施肥量を抑えて多収イネを栽培した水田では、11年間で10アールあたり76.3kgの難分解性炭素が土壌に蓄積。一方、カリウムを十分に施肥してコシヒカリを栽培した水田には難分解性炭素は蓄積しなかった。
水田の養分収支とイネの根・土壌の調査から、(1)カリウムの施肥の抑制により、肥料・灌漑水・土壌に由来する吸収しやすい形のカリウムの供給量が不足しても、多収イネは他の給源から必要量のカリウムを吸収し正常に生育した、(2)多収イネの根が土壌中の鉱物を壊し、その構成元素であるカリウム、ケイ酸、アルミニウムを放出する、(3)鉱物から放出されたカリウム、ケイ酸を多収イネが吸収し、アルミニウムは根圏に残る、(4)アルミニウムは土壌中の炭素と結合して難分解性炭素が形成・蓄積する、の4点が分かった。
一方、カリウムが十分に施肥されたコシヒカリ栽培水田では鉱物が利用されず、難分解性炭素が形成しなかった。この結果は、イネのカリウム施肥を制御することで、難分解性炭素の土壌蓄積を人為的に促進できる可能性を示しており、新たな地球温暖化対策技術の開発につながると期待される。今後、鉱物中のカリウム、ケイ酸を利用できる能力がイネの品種によって異なるのか、堆肥などの施用が、難分解性炭素の蓄積をいっそう増加させることができるのか等について検討を予定。
多収イネが鉱物中のカリウム・ケイ酸を吸収した結果、土壌で難分解性炭素が形成し蓄積するメカニズムの概念図
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