複雑な地形で日最低気温をピンポイントに推定 作物の凍霜害対策等に期待 農研機構2023年5月30日
農研機構は、夜間の放射冷却に伴って発生する冷気流の動きを考慮し、5mメッシュで日最低気温を推定できる手法を開発した。同成果は、傾斜地や丘陵地など地形が複雑で冷気流が発生しやすい場所に立地する農地についてピンポイントな気象データの整備と提供につながり、作物の凍霜害対策や生育予測などに役立つ。
気候変動やそれに伴う極端気象の頻発から、気象情報に対するニーズが高まっている。特に、農地における局所的な現象については、より細かい空間解像度の気象情報が望まれるため、農研機構では全国を対象に1kmメッシュごとに提供される気象データ「メッシュ農業気象データ」の整備を進め提供している。しかし、特に中山間地など狭い地域の中で高低差が大きいなど複雑な地形の農地では、「メッシュ農業気象データ」が推定する最低気温より実際の最低気温が低くなり、この差が10℃近くになることもある。
これは、夜間の放射冷却によって地面が冷え、地面近くの冷却された空気が地形の谷部分に流れ込み、凹地に冷気が溜まるため周辺との気温差が大きくなることに起因。こうした冷気流の影響を考慮しながら気温情報を提供するには、数メートルから数十メートルの間隔で、気温を正確に測定するための通風装置と日射除けが装着された温度計を設置する必要があるが、技術的・経済的な面から実現が難しい。
そこで農研機構は、2つの指標、標高データから得られる累積流量と代表地点の2高度における気温の差から得られる放射冷却強度とを用い、冷気流の変化を考慮して「メッシュ農業気象データ」の日最低気温を補正する手法を開発した。同手法は、現地で計測した最低気温と上記2つの指標との関係式を作成することで、使用した標高データと同じ空間解像度で日最低気温を推定できる。
今回使用した標高データ(国土地理院提供の数値標高モデル)は5メートルと細かい解像度を持つため、同手法を利用することで、利用者が自分の圃場の最低気温をピンポイントで知ることができる。同手法は、三球温度計など簡易な気温測器と標高データがあれば利用可能。
今後、この研究成果をもとに、任意の場所および日に最低気温を予測できるシステムを構築することで、よりピンポイントな気象データが提供され、作物の凍霜害対策や生育予測などに利用できると考えられる。
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