リンゴ病害を引き起こすカビ毒パツリンを分解する微生物を発見 東京理科大2023年9月8日
東京理科大学創域理工学部生命生物科学科の古屋俊樹准教授、同大学大学院創域理工学研究科生命生物科学専攻の三田芽実大学院生(当時)、佐藤梨奈大学院生(当時)、柿沼美穂大学院生らの研究グループは、カビ毒パツリンの毒性に耐えて生きることができる微生物を自然界から分離することに成功。この種がパツリンを効率的に分解できる機構を持つことも明らかにした。今回発見されたパツリン耐性を持つカビやパツリン分解機構は、カビ毒の防除への応用につながる可能性がある。
図1:Acremonium sp. TUS-MM1株によるパツリンの分解
ある種のカビ(糸状菌)は、カビ毒と呼ばれる毒性物質を産生することが知られており、カビ毒による食品汚染がしばしば問題になる。パツリンは、代表的なカビ毒の一つで、リンゴ果実に着生したPenicillium expansum(リンゴ青カビ病菌)というカビにより産生される。パツリンの汚染はリンゴ果実だけでなく、ジュースなどの加工品でも見られることがある。
このパツリンは、相手の細胞内で抗酸化物質のグルタチオンに結合し、グルタチオン濃度の低下を引き起こすと有害な活性酸素種が蓄積しやすくなり、この活性酸素種がDNA等にダメージを与えて細胞機能を損なう。こうした作用機序から、パツリンはヒトや動物だけでなく微生物にも毒性を示す。
多くの微生物はパツリン存在下で増殖できないが、Rhodosporidium属の酵母やGluconobacter属の細菌などカビ以外の微生物では、パツリンを他の化合物に分解することでその毒性を低下させる種が報告されている。一方、カビに分類される微生物については、パツリンを分解できる株の存在や分解機構についてよくわかっていなかった。
研究グループは、パツリンの毒性に耐えて生きることができる微生物を自然界から分離することに成功。この微生物は分子系統解析によりAcremonium属のカビであることがわかった。
さらに、発見した微生物がパツリンを分解することを見いだし、その分解機構を解析。その結果、菌体がパツリンをデソキシパツリン酸という化合物に変換すると同時に、菌体が外に放出する成分もパツリン分解活性を示し、これらが協調的に作用してパツリンを効率的に分解できることを明らかにした(図1)。この微生物やパツリン分解に関わる成分は、カビ毒の防除に応用できる可能性を秘めている。
同研究成果は8月11日、国際学術誌『MicrobiologyOpen』にオンライン掲載された。
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