農研機構と共同研究 天然繭タンパク質から新たな皮膚保護剤を開発 ユースキン製薬2024年8月22日
ユースキン製薬と農研機構は、カイコの繭(まゆ)から抽出した「高分子量セリシン」を使って新たな皮膚保護剤を開発した。天然由来の高分子セリシンは、機能性を有した自然志向の潮流に則した分として様々な活用が期待できる。
セリシンは繭の繊維を取り囲む親水性のタンパク質で、分解されていない高分子量の状態で被膜を形成することが知られているが、安定化が難しい素材。
今回の開発では、変質しやすく不安定な高分子量セリシンについて長期間にわたる安定化に成功。機能性を活かした皮膚のバリア機能を補う機能をもった化粧品素材への使用を可能にした。
日常のスキンケアはユーザーの肌悩みが多様化し、市場では高い安全性と機能性を有した製品が望まれる一方、海洋・土壌汚染などの環境課題を背景に、よりサスティナブルな天然素材への利用にも注目が集まっている。
ユースキン製薬では、様々な消費者のニーズを解決する素材のひとつとして、カイコがつくる繭成分に着目し、農研機構と共同で研究を進めた。
カイコの繭は繊維を構成するフィブロインと、それらを取り囲んで保護する親水性のセリシンという2種類のタンパク質からできている(図1)。
フィブロインはシルク繊維として様々な分野で応用利用されているが、セリシンは利用が進んでいない。セリシンはフィブロイン繊維の取得過程で分解されるが、天然状態の高分子量を維持したセリシンでは透明な被膜を形成し、寒天状のゲルを形成するといったユニークな機能を持つ。
ユースキン製薬と農研機構はこの機能に着目し、被膜形成能によって皮膚を保護・保湿できる天然由来の新たな化粧品素材の開発を目指した。
セリシンはフィブロイン繊維から分離する過程で分解され、分子量が低下する問題があることから、天然状態の高品質な高分子量セリシンを得るため、農研機構が保有する特殊なカイコ品種「セリシンホープ」に着目。
セリシンホープはフィブロインを生産せず、98%以上がセリシンで残りがその他微量成分からなる繭を作る(図2)。
また、別の課題として、一般に高分子量セリシンの抽出に用いられるリチウム塩には毒性があり、残留の懸念から化粧品素材としての利用には安全上の問題がある。
そこで、安全性が明らかで食品や化粧品への配合がすでに認められているカルシウム塩を代わりに使うことで、安全な高分子量セリシンを抽出するための条件を確立した。
そのほか、高分子量セリシンは固化しやすく、長期間にわたる安定的な保管が困難だったが、グリセリンと組み合わせることで様々な課題を解決。
最終的に高分子量セリシンを安定的に維持できる「高分子量セリシングリセリン組成物(HSG)の開発に成功した(図3)。
従来技術の3つの課題を克服したHSGは、化粧品素材として製造面・機能面・安定性の全てにおいて扱いやすい素材となる。
HSGからグリセリンを取り除いて乾燥すると滑らかで柔軟な被膜を形成したことから、HSGに含まれる高分子量セリシンは被膜形成能を維持していることを確認した。
HSGは、皮膚に適用した際にはグリセリンが皮膚内に浸透する一方、高分子量セリシンは皮膚上に残って被膜を形成し、バリア機能を補う。
また、クリーム等の化粧品基剤に分解することなく配合が可能で、配合した際に皮膚の水分蒸散を抑制する効果が確認。化粧品に配合したHSGが皮膚のバリア機能を補うことが示された。
同研究により、応用利用が進んでいなかった高分子量セリシンを安定な素材として大量生産することが可能となり、セリシンの被膜形成能を活かして皮膚上でバリア機能を補う効果を持ったHSGの開発に成功。
天然由来の高分子セリシンは、機能性を有しているうえ、自然志向の潮流に則した優れた成分として今後様々な活用が期待できる。
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