高温で発生するシイタケ菌株を選抜できるDNAマーカーを開発 森林総合研究所2024年10月25日
森林研究・整備機構森林総合研究所、岩手生物工学研究センター、大分県農林水産研究指導センター、北研、東京科学大学、九州大学の研究グループは、シイタケの発生温度を決定する遺伝子座を特定し、高温で発生する菌株を判別できるDNAマーカーを開発した。

図1. シイタケの高温発生に関わる量的形質遺伝子座を特定するまでの流れ
シイタケは空調施設内での菌床栽培や屋外での原木栽培によって生産され、その発生は温度に強く依存し、品種によって異なることが知られている。シイタケは比較的低温を好むきのこで、現在広く栽培されている品種の多くは通常10〜22℃で発生。一方、近年の気候変動に伴う温暖化の影響を受けた発生不良や、冷房等に用いる光熱費の高騰による生産コストの上昇が懸念され、それらの問題に対応できる品種の作出が期待されている。
同研究グループは、シイタケの発生温度を決める遺伝子座をQTL解析によって特定し、高温で発生する菌株を判別するDNAマーカーを開発。さらに、このDNAマーカーで選抜したシイタケが高温条件下で発生することを栽培試験で実証し、菌株の選抜にかかる時間を従来の方法から約75%削減することができた。
同研究においては、シイタケの発生温度に関与する遺伝子座を探るために、ゲノム上の位置(量的形質遺伝子座:QTL)の特定に着手(図1)。まず、高温できのこが発生する品種(以下、高温性品種)と低温で発生する品種(低温性品種)の交配によって交雑F1株を作出し、その交雑株の胞子を取得した。
それら胞子から成長した一核菌糸の塩基配列パターンを解析して染色体の連鎖地図を構築する一方、一核菌糸によるきのこの発生に適した温度を評価。取得した一核菌糸と低温性品種の一核菌糸を交配して92株のF2集団を作出し、10℃〜22℃までの4段階の温度が異なる施設内において、通常より20分の1以下のサイズの50g小型菌床および1.5 kgの通常サイズの菌床を用いて発生試験を行った。
そしてQTL解析を行うため、連鎖地図と発生評価試験の結果を統合し、シイタケの発生温度に関与する可能性が高いと考えられる遺伝子座を解析した結果、4つの遺伝子座がシイタケの温度発生に関与する可能性が高いことが分かった。
さらに同研究では、DNAマーカーの効果を確認するため、高温性品種を識別するDNAマーカーを使い、45菌株から13菌株を選抜して菌床栽培による発生試験を行ったところ、全ての菌株が22℃の高温条件下できのこを発生した。
このDNAマーカーの開発により、高温で発生可能なシイタケ株の選抜の効率化や新品種の作出促進、そして原木栽培での安定発生や菌床栽培での光熱費の削減など、シイタケ産業の発展に貢献することが期待される。
同研究成果は、日本きのこ学会誌Vol.32で公開された。
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