炭化物施用深度の最適化が窒素溶脱の抑制に寄与 表層施用で窒素溶脱を抑制 国際農研2024年12月11日
国際農研は、独自開発した土壌中の窒素動態を精密観測するパイプ装置を活用することで、熱帯・島嶼研究拠点(石垣市)における炭化物の施用深度が窒素溶脱量に与える影響を明らかにした。同研究は、窒素肥料の過剰施肥による環境負荷の問題に対応し、持続性の高い農業の実現に向けた重要な一歩となる。

熱帯・島嶼研究拠点のガラス室内で4条件(無施用、表層施用、作土層施用、下層施用)
のもと各5反復で行われたパイプ試験
同研究では、沖縄の代表的な酸性土壌である「国頭マージ」を用いて実験。直径20cm、深さ95cmのパイプに土壌を充填し、炭化物の施用条件を無施用、表層(0-5cm)、作土層(0-30cm)、下層(25-30cm)とした。各条件下で窒素肥料の施肥と表面灌水を行い、パイプ下端からの窒素溶脱量などを測定した結果、炭化物の施用深度により窒素溶脱量が大きく異なることが明らかになった。

硝酸態窒素溶脱量(左)およびアンモニア態窒素溶脱量(右)の増加・減少率
図中の黒色は炭化物含有率が高いことを、灰色は炭化物含有率が低いことを示す
表層施用(0-5cm)では、無施用と比べて硝酸態窒素の溶脱が12.3%減少するなど、窒素溶脱量減少への顕著な効果が現れた。一方で、作土層施用(0-30cm)では硝酸態窒素が6.4%、アンモニア態窒素が164.1%増加するなど、深度による明確な差異が示された。
この研究成果は、炭化物の施用深度が土壌の窒素吸着能と作物の乾燥ストレスに影響を与え、結果として窒素溶脱量を左右することを示す。特に表層施用では、無施用と比較して根域土壌の窒素吸着量増加と乾燥ストレス軽減効果が確認。同研究により、同量の炭化物を施用する場合でも、その深度を適切に選択することで窒素溶脱抑制効果を最大化できる可能性が示された。
この研究成果を基に、環境負荷の軽減と窒素肥料使用量の削減を両立する技術開発を進め、より強靭で持続可能な農業の実現、さらには地球規模の窒素サイクルのバランス回復への貢献を目指す。
同研究成果は10月1日、『Scientific Reports』電子版に掲載された。
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