凍結剤不要 植物由来RNAを安定に保存・解析する新手法を開発 国際農研2025年2月14日
国際農研は、開発途上地域で入手困難な液体窒素などの凍結剤を使わずに植物の遺伝子の発現量を解析するための新たな手法を開発した。
生物はゲノム情報に基づいてDNAからRNAを転写し、主にタンパク質の合成を通して、ストレス耐性や植物の形態などの形質を表現する。
RNAの解析は、高いストレス耐性と関わるメカニズムの解明や、優れた収量を持つ作物の開発の加速化に不可欠だが、RNAは不安定で、液体窒素やドライアイスなどの凍結剤の入手が困難な開発途上地域においては、圃場での植物遺伝子解析は難しく、作物開発のボトルネックとなっていた。
新たに開発したインフィルトレーション法は、植物の葉を構成する細胞の隙間に核酸安定化溶液を浸透させることで、凍結剤を使わずに植物の葉組織中のRNAを安定的に保存できる手法。この手法を用いて、アフリカのマダガスカルの水田でイネの葉の遺伝子の発現量を解析し、植物の生育不良の原因の特定に成功した。また、植物組織から抽出後のRNAを二酸化ケイ素膜に結合させることにより、凍結剤を使用しない状態で安定に運搬する技術も開発。今後開発途上地域のサンプルを用いたRNAシーケンスなどのゲノミクス解析が実施可能であることが示唆された。
同研究の成果により、開発途上地域における植物の遺伝子研究が飛躍的に進むことが期待される。具体的には、ほ場における植物の分子生理的な応答の理解や、栄養欠乏や病害のストレスに応答するメカニズムの解析などによる作物の開発が大幅に加速化されることが期待される。
同研究成果は2024年12月19日、国際科学専門誌『Plant Methods』電子版に掲載された。
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