「強光でも負けない植物!」生産性向上の鍵となる画期的な光合成促進剤を発見 東京大学2025年3月3日
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、強い日差しにも負けず、植物の生産性を高める画期的な光合成促進剤を発見した。同技術の活用により、過酷な環境でも作物を安定して育てることが可能となり、世界の食料問題解決に貢献することが期待される。

図1:「強光ストレスを克服!」植物の生産性を劇的に高める光合成促進剤の発見
増え続ける世界人口を支えるため、食料生産を2050年までに現在より50%増やす必要があるとされるが、こうした環境ストレスがその実現を阻む大きな障害となっている。
同研究グループは植物が強光ストレス下でも効率的に光合成を行い、健康に成長できる化合物を探し出すための独自のスクリーニングシステムを開発。このシステムを活用して、1万2000種類の化合物を光合成の可視化装置で解析したところ、「アントラキノン(3つのベンゼン環が繋がった構造)」と呼ばれる化合物の仲間が強光ストレス環境下で光合成を促進することを発見した(図1, 2)。さらに、この化合物は、植物がストレスを受けていない普通の環境でも悪影響を及ぼさないことも明らかになった。

図2:タバコのリーフディスクを使用したケミカルスクリーニングシステムの構築
同研究では、アントラキノンの仲間がタバコ、レタス、トマト、シロイヌナズナで光ストレスを軽減し、光合成能力や植物成長を助けることを確認。さらに、この化合物はストレス環境での安全性も高く、通常の栽培条件では7日以内に分解されることもわかっている。アントラキノンの仲間は、農業における光ストレス耐性向上剤として、作物の生産性向上や高価値作物(果物、野菜、花卉など)の品質維持に貢献する可能性がある。
この研究成果は、気候変動による農業課題を克服し、持続可能な食料供給の実現に向けた新しい技術として期待される。
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