45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
国際農研は、タイ農業局と共同で実施してきた45年以上にわたる化学肥料と有機物の農地施用に関する長期連用試験データを解析。畑地での化学肥料と有機物施用の組合せが土壌炭素貯留量の増加に効果的であることを明らかにした。

タイ国内の6地点で継続する長期連用試験の概要
土壌は陸域最大の炭素貯留庫であり、わずかな変動でさえ全球の炭素循環に大きな影響を与える。農地土壌の土壌炭素動態の解明には、同一農地で異なる農地管理の影響を長期的に調査する「長期連用試験」が重要だが、熱帯地域においては長期連用試験が限られ、農地管理の変化が土壌炭素貯留に与える影響を正確に評価することが難しい。
国際農研とタイ農業局は、タイ国内3地点で45年以上継続されている熱帯畑作(キャッサバ)を対象とした長期連用試験のデータを多変量解析の手法を用いて、農地管理が土壌炭素貯留量に与える影響を定量的に示した。その結果、化学肥料と有機物(作物残渣や堆肥)を組合せて施用することで、土壌炭素貯留量が大幅に増加することが明らかになった。
特に、堆肥の施用は作物残渣の還元よりも効果的で、土壌炭素貯留を促進することを確認した。また、土壌の種類によって炭素貯留の傾向が異なることも判明。粘土質土壌では表層に集中する一方、砂質土壌では1.0mまでの全層で有意な効果が見られた。この結果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の算定基準(表層から0.3mまで)を超えて、下層への炭素貯留の評価も重要であることを示唆している。
さらに、構造方程式モデルを用いた解析により、有機物施用が土壌炭素を増加させ、特に砂質土壌では肥沃度向上と作物収量増加に寄与する可能性が示された。これらの成果は、熱帯地域における農地の土壌炭素動態をより正確に評価するモデルの開発に貢献し、気候変動対策としての土壌炭素貯留の可能性を示す。
今後、さらなる長期連用試験データの分析を進め、日本とタイの研究機関との連携を強化しながら、土壌炭素貯留ポテンシャルの広域評価を目指す。同研究成果は、熱帯型土壌炭素動態モデルの構築に大きく寄与するとともに、環境負荷軽減と土壌肥沃度向上を両立する持続可能な農業の確立に貢献することが期待される。
同研究成果は2024年10月3日、国際科学専門誌『Land Degradation & Development』電子版に掲載された。
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