カイコのシルク生産を担う絹糸腺 全遺伝子の発現量を解析 データを公開2025年6月3日
農研機構、広島大学、情報・システム研究機構は共同で、カイコの絹糸腺での全遺伝子の発現量について詳細なデータを取得・解析し、得られたデータを公開した。同研究で得られたデータを活用して、ニーズに合ったカイコの品種育成の加速化や、有用タンパク質の生産性向上などカイコの産業利用の拡大を目指す。
近年、カイコの作るシルクは環境負荷の少ない天然繊維として再び注目を浴びている。また、2000年にカイコの遺伝子組換え技術が開発され、カイコが本来作らないタンパク質をシルクと一緒に生産させることが可能になったため、カイコは新たなタンパク質生産ツールとしても注目されている。
さらなるカイコの産業利用の拡大を目指すには、カイコ1頭当たりのシルク生産量の増加が強く望まれており、その課題をクリアするにはカイコ体内におけるシルクの合成メカニズムの理解が必要だが、まだ十分に明らかになっていない。
図1:研究概要。シルクを作る組織である絹糸腺のどの部位で、どのような遺伝子が、いつ働くのか、詳細に調査
そこで農研機構、広島大学、情報・システム研究機構の共同研究グループは、シルクを作る組織である絹糸腺のどの部位で、どのような遺伝子が、いつ働くのかについて詳細に調査。具体的には、カイコ5齢幼虫の絹糸腺を24時間毎に取り出して、部位毎にカイコの全遺伝子(約1万7000種類)の発現量を網羅的に解析(図1)した。
絹糸腺を細かな部位に分け、経時的かつ網羅的に全ての遺伝子発現量を解析したデータはこれまでなかった。これらのデータは、全て公開しており、ダウンロード可能。カイコを中心とした昆虫研究に活用できる。
今後、研究グループは同研究で得られたデータを活用し、シルクが作られるメカニズムの全容解明に取り組み、高品質なシルクをより多く作るカイコの品種育成や、カイコを用いた有用タンパク質の生産性向上を通して、養蚕業の発展や新規のバイオ産業創出への貢献を目指す。
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