イタリア野菜の魅力満喫 トキタ種苗オープンデー見学 東京イタリア野菜研究会2019年11月18日
イタリア野菜の普及を通して健康長寿社会をめざす「東京イタリア野菜研究会」は11月13日、イタリア野菜を学び味わうバスツアー「まるごとイタリア野菜満喫の旅」を実施した。イタリア野菜の開発を進めるトキタ種苗が同13、14日、埼玉県加須市にある大利根研究農場で開いた「オープンデー2019」に参加し、イタリア野菜について学んだあと、イタリア野菜を使った和食のフルコースを味わい、イタリア野菜の魅力を改めて確認した。
ほ場では、さまざまなイタリア野菜の栽培現場を見学
東京イタリア野菜研究会は、千葉大学で農学を専攻し、農業振興や緑化施策についての提言を続けている元東京都議会議員で、野菜ソムリエプロの資格を持つ山下ようこさんが主宰するイタリア野菜愛好者の集まり。都市部の失われつつある農地を守り、健康維持に必要な野菜中心の食生活への方策としてイタリア野菜に着目し、2016年に同会を立ち上げた。
山下さんは「抗酸化作用など健康栄養成分が多いイタリア野菜を食べることで健康増進はもちろん、定年退職後に身近な農地で野菜作りをすることで、体力改善を図ったり、新たな地域コミュニケーションが生まれるなど、健康長寿社会の充実につなげていければ」と話す。
3周年となる今回のバスツアーには、野菜ソムリエや農業関係者、茶道や華道の師範など20代から90代まで幅広く21人が参加。セミナーでイタリア野菜の基礎知識を学んだ後、実際にほ場へ足を運び、各作物の担当者から解説を受けながら栽培施設などを見学した。

バスツアーに参加した東京イタリア野菜研究会の一行。
後列右から主宰の山下さん、トキタ種苗の時田勉会長
1917年創業で今年102年目のトキタ種苗は、10年前から「グストイタリア」と銘打って日本の気候風土に合わせて品種改良したイタリア野菜を広めるプロジェクトを展開しており、すでに40種類以上のイタリア野菜の種子を販売している。
なかでも一番売れているのが「カリーノケール」というサラダ用のケール。ビタミンやミネラルを豊富に含み、普通のキャベツより栄養価も高い。ジョナサン、ロイヤルホスト、デニーズなど多くのファミリーレストランのサラダバーなどで利用されるなど普及が進んでいる。
セミナーで講演した同社取締役 開発普及室の吉田昌美室長は、「ケールというと『まずい』というイメージだが、カリーノケールは青臭くなくて食べやすい。抗酸化作用がありビタミンCも豊富なので昨今の健康志向にも合っている」と話し、体にやさしく、おいしいイタリア野菜の魅力をアピールした。
同プロジェクトの10周年となる今年のオープンデーでは同社が取り組む全イタリア野菜を紹介。新商品として注目の「サラダラティーナ」や「トマトベリーオペラ」も紹介した。
「サラダラティーナ」は見た目はカブだが、肉質が緻密で甘みがありサラダに適している。同社開発の種として、すでにイタリア・ラティーナ地方で多く栽培されていることから、今回は日本市場へ満を持しての"凱旋"となる。また、イチゴのような形状で甘い「トマトベリー」の新品種「トマトベリーオペラ」は、2月の最低温度が5度程度まで下がるという地中海のシチリア島で育種された品種。越冬に強く、厳寒期にも枯れないため、試験産地ではハウスの暖房コストを従来の半分程度に抑えることができたという。
2日間で例年並みの約3000人が参加したオープンデーの会場では、イタリア野菜を使った料理の試食や、イタリア野菜や種の即売も行われた。スーパーなど身近な売り場であまり見かけない珍しいイタリア野菜を求めて早々に売り切れの野菜も出るほど盛況だった。

珍しいイタリア野菜を手ごろな価格で買える直売所は大盛況
オープンデーでイタリア野菜のほ場を見学した一行は、さいたま市内の和食店に場所を移し、イタリア野菜を使った懐石料理のコースを堪能した。新商品のカブ「サラダラティーナ」を使ったスープや、旨味のある葉野菜「カーボロネロ」と四元豚の炒め物などの献立に舌鼓を打った。
参加者で野菜ソムリエの藤井康代さんは「イタリア野菜というと癖の強いイメージだが意外と淡白で和食でも違和感がない。ビジュアルもきれいで栄養価も高く、ワクワクする野菜」と感想を述べた。また、西多摩のスーパーに勤める野菜ソムリエプロの嶋﨑益己さんは「トキタさんの取り組みやイタリア野菜の魅力を生活者に伝えていくのが私の仕事。その結果、東京イタリア野菜研究会がめざしている農業の活性化や生活者の健康が実現できれば」と語った。
ツアーを主宰した山下さんは「イタリア野菜は洋食のものという固定観念を抱く人も多かったが、日本食の一流料理人がイタリア野菜に取り組むというアクションは、イタリア野菜ファンのすそ野を広げるきっかけになる。イタリア野菜の栽培方法を学びたいという声も多く、今後は栽培方法が中心のセミナーや、各地の産地訪問などを通して生産者と連携した企画を開催していきたい」と話した。

左・イタリア野菜で最も普及している「カリーノケール」のほ場、右・直売所で販売されていた「サラダラティーナ」。一見すると日本のカブと変わらないがその食感と甘みは別物
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