史上最高値の肥料原料の安定確保へ 国内資源の利活用促進を JA全農2022年6月1日
史上最高値にまで上昇している肥料原料情勢をふまえ、JA全農は肥料原料の安定確保とともに、今後は国内地域資源の利活用促進も進める。
全農が明らかにした肥料原料の情勢によると、窒素質肥料の原料となるアンモニアの国際市況は、原油、天然ガス価格の高騰を受けて急騰している。
2021年初めは1トン300ドル程度だったが、今年5月は900ドルを超え3倍以上に急騰した。
ロシアからアンモニアを調達してきた肥料サプライヤーも調達先の切り替えを行っており、これにともなうコスト上昇も高騰の一因となっている。
尿素は昨年10月に中国が輸出規制を行ったことから高騰し、その後、今年初めにはいったん下がったが、ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁による輸出停滞で高騰に転じている。
りん酸の原料となるりん安も中国の輸出規制など尿素と同様の理由で上昇しており、原料のアンモニアや硫黄価格も上昇を続けており、今後も強含みで推移することが見込まれているという。
全農が5月31日に発表した秋肥の供給価格のうち、高度化成肥料(15-15-15)は、55%以上の値上げとなる。値上げ要因の95%は原料コストの上昇による。りん安の高騰えりん酸が42%を占め、加里が27%、窒素が26%となっている。
残りの5%は製造諸経費の上昇だ。
複合肥料の製造は、さまざまな原料を混ぜ合わせて粒にして乾燥させることが必要だが、その乾燥に重油が使われる。原油価格の高騰で重油価格の上昇しており、それが肥料製造コストに影響する。
また、肥料袋の製造コストの上昇している。もっとも多いのが20㎏袋だが、その原料となる国産ナフサは2020年10-12月は1KL当たり3万円程度だったが、2021年10-12月は6万円を超え、2倍以上となった。そのほか電力価格も高騰している。
こうしたなか、全農は中国、ロシアといった肥料原料の調達困難な国からモロッコや中東などの国に産地の切り替えや、塩化加里ではカナダからの調達量を増やすなどの取り組みを進める。輸送コストや国内保管料の上昇分に対する国の支援策を活用する。
また、銘柄集約と農家予約の積み上げ強化も図る。
銘柄集約は、一般化成肥料で全国550銘柄あったものを集中購買で24銘柄に集約した。工場の製造コストが引き下げられたメリットを価格に反映する。この取り組みは令和3年度で11万t強の出荷となったが、今年度はさらなる積み上げをめざす。
今後も肥料原料の高騰が続くとみられることが、重要となるのが土壌診断に基づく適正施肥と、堆肥など国内地域資源の利活用促進だ。
現在、全農はJAに実証ほ場の選定を働きかけており、土壌分析による余分な肥料の減らすことや、堆肥入りの混合肥料による化学肥料の削減などの取り組みを進めていく。実証圃の取り組みによって「新たな施肥暦」を作成し、来春の生産者の選択肢を広げたい考えだ。
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