中古農業機械販売で急成長 ネット型リユース事業で国内外の市場を広げる マーケットエンタープライズ2025年4月14日
国内は離農者が増える一方で、新規就農者はもちろん、小規模の農業者でも農業機械の需要はある。しかし、新規購入は大きな投資を伴うため、近年は中古農業機械市場が拡大している。ネット型リユース事業のマーケットエンタープライズ(東京)は2017年から中古農機具の買い取りを開始し、2020年には関連会社で「UMM中古農機市場」を開設。売り上げ規模は当初から20倍超と急成長している。従来は欧州など海外向けが多かったが、需要の高まりに対応して国内向け販売を強化する。
北関東の自社リユースセンター
常時2000台の在庫を保有
同社は06年に設立し、インターネットを介して不要品買取・販売する「ネット型リユース事業」を主力としている。当初は農機を取り扱っていなかったが、「コンタクトセンター(コールセンター)への問い合わせを契機に、ビジネスの可能性」(同社)があると判断して事業化に踏み切った。当初は苦戦したものの、2024年6月期は売上高29億2900万円と6年間で20倍を超える成長率となっている。
在庫は常時2000台
自社のメディアサイトもあり、全国の売り手と買い手の双方の情報を幅広く得られる。農機具販売業者やメーカーの中古農機を下取りする販売会社、JA(単協・県本部)も取引先だ。自社の農機具専門リユースセンターを鳥取県と茨城県に置き、全国13の提携先農機具店なども合わせて在庫は常時2000台程度を保有、需要の増加に応えてきた。
国内の取り扱いは「圧倒的にトラクターが多く、そのほかは季節的な変動で、実際の農作業の3カ月ほど前から注文が来る」。価格メリットを訴求するため、基本的には現状販売で、コストがかかる修理やメインテナンスは販売先から要請があれば行う。自社の2つのセンターには整備士が常駐している。
欧州中心に81カ国・地域に輸出実績
中古農機の売上高推移
海外はUMMとは別の専用サイト「FARM MART」を通じて、欧州を中心に81カ国・地域への輸出実績があり、売り上げの70~80%を占めてきた。欧州では「大型農機が入れないブドウ農園などで日本の農機の需要が高い」という。日本では個人の農家がトラクターなどを所有する場合が多く 、長年丁寧に整備されて古い農機でも状態がいい。そのため人気があり、欧州以外にも東南アジアなどに輸出している。
これまでは海外向けを強化し、一時高騰した海上運賃が徐々に落ち着いてきた。しかし、米国の関税政策による「世界全体の景気など外的要因に起因するものは今後注視する必要がある 」。また、国内では「数年後に離農を考えている人も、新品ではなく中古の農機具ニーズが高まっている」といった販売先からの情報もある。今後は新規就農者や既存の農業者の多様なニーズに応えるため、農家向けに販売を行う業者への販売を強化し「国内の需要を満たしたい」考えだ。
国内向けは物流整備、アフリカ市場調査も
国内の陸上輸送は「物流2024年問題」を機にコストが上昇しており、物流の整備で「最適化のために様々な手段や連携を模索」する。自社での搬出入に加えて運送会社とも連携しており、需要の動向に合わせて全国の複数のエリアに効率よく農機を輸送できる環境を整備したい考え。コロナ下で中断していた展示会(不定期)も再開し、昨年10月には北関東リユースセンターで展示即売会も開いた。
海外向けも、輸出を想定して仕入れを行っている企業への販売を強化し「自社だけではなく業界全体の輸出が増えるための取り組み」を積極的に進める。また、新たな市場としてタンザニアなど東アフリカへの進出も模索している。JICA(国際協力機構)の「中小企業・SDGsビジネス事業」にアフリカでの中古農機具に関する調査が採択され、現地での見本市に出展するなど周辺国を含めたニーズ調査も行う。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































