自家採種約40%達成 農薬・化学肥料不使用の自然栽培野菜 翔栄ファーム前橋農場2021年3月4日
(株)翔栄クリエイトは3月2日、自社が保有する翔栄ファームの前橋農場が2019年の作付け開始以来、今年で3年目を迎えた固定種を使った自家採種の品種の割合が約4割を達成したことを発表。3年後には全ての自社農場で100%(148種類)の自家採種達成に向けて取り組みを強化する。
自家採種で収穫された真黒茄子同社のアグリ事業は2016年に発足し、自社が保有する翔栄ファームと前橋農場(群馬県)、龍ヶ崎農場(茨城県)、美濃加茂農場(岐阜県)で自然栽培の野菜・菌床類を育てている。
自然栽培は、栽培過程で農薬や化学肥料を使う「慣行栽培」とは違い、農薬を使わず肥料は自然由来の有機肥料のみを使い、植物と土の本来持つ力を引き出す栽培方法。種は、固定種・在来種のみ(F1種でない)に限定し、「自家採種」の取り組みを進めている。
翔栄ファームは今年で、2018年の作付け開始から前橋農場と龍ヶ崎農場は3年目、美濃加茂農場では2年目を迎えた。現在、前橋農場では28品種のうち11品種(約4割)で自家採種を達成しており、2年後(2023年)には、28品種全てで自家採種の実現をめざしている。
同社は、品種の系統を守るため選抜した野菜の種を取り、その種を蒔いて育てた中から、さらに一番良いものを選んで播種。種は何代も繰り返して受け継がれてきた固定種と在来種を使用。その土地の風土に合わせて成長した野菜から種を採り、次の栽培につなげることは持続可能な農業の実現に向け重要な取り組みと位置付けている。一般的に流通している、異なる親の交配により作られた「F1種」と違い、栄養剤でコーティングされておらず、発芽が不安定で一定量の収穫を見込むことはできないが、地域の気候や風土に適応しているため、その土地ならではの品種を育てることができる。
葉物や根菜類は、自家採種をしない通常の栽培では、花が咲く前に収穫を終えるため、畑を利用する期間が短くなる。通常、種まきは春と秋の2回行われるが、自家採取では、秋に撒く種を採り、その種を植え、春に花が咲き、果実が熟す夏まで、その作物が畑を占有。その間、他の作物が作れず生産性が悪くなるため、種や苗は外から購入することで、収穫と同時に次の作物の作付け準備に入る農家がほとんどだが、同社は「種や苗を外から購入することは、どこの土地で育ったか、その種に農薬が何回使用されたのか、どのような栽培方法をされたのか分からない種を使うことになり、真の意味で安心安全な農産物を生産することにはならない」としている。
東京南瓜のタネ循環型農業で環境破壊を抑制
翔栄ファームの自家採取の取り組みは、自ら作った作物から採った種である固定種・在来種を使い、土作りからこだわることで環境負荷を軽減。持続可能な農業(循環型農業)を行うことで、環境破壊を抑制する。農薬なども使っていないため、何代にもわたり、繰り返し受け継ぐことができる。
また、現在の日本の農業では、種(F1種)は、海外からの輸入に頼らないと持続できない状況であることから、同社は「種を採ることも循環型農業のひとつ」と考え、環境維持、種の維持を含めて責任を持つことから自家採種を急ピッチで進めている。
■前橋農場で自家採種している11品種
真黒茄子、東京南瓜、土垂(里芋)、福地ホワイト六片にんにく、黒田五寸人参、高濃四葉胡瓜、ダビデの星(オクラ)、伏見甘長唐辛子、エンレイ大豆、石倉1本ねぎ、下仁田ねぎ
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