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アメリカ的競争からアジア的協同へ2015年1月5日

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【森島 賢】

 新年になって、安倍晋三内閣が本格的に始動した。今年は農業にとって多難な年になるだろう。
 昨年末の総選挙で、安倍内閣は安定政権を維持した。首相は、1強多弱のもと、小選挙区制に支えられて、独裁的な政権運営をするだろう。そうして、いよいよ年来の政治信念を実現したいと考えるだろう。
 首相の信念には危ういものがある。それと同時に、現実を見つめた末にみせる柔軟さもある。いきなり憲法9条を削除するのではなく、96条から攻めるし、消費増税を先延ばしにするなど、柔軟に対応する。それに惑わされてはならない。

◆「戦後レジームからの脱却」は平和主義の否定

 首相の信念の1つめは、「戦後レジームからの脱却」であり、自主憲法の制定である。
 その向かうところは、アメリカと対等の地位に立つ日米軍事同盟である。これは憲法9条を削除し、平和主義を否定する、という危険な信念である。
 とりあえずは、名前だけでもいいから集団的自衛権の行使を国会で法制化する。法制化しやすくするために、行使の範囲を当面は狭く限定する。そうして、やがて拡大することは目に見えている。
 これは、戦前、アジアを欧米の侵略から集団的に自衛するという、大東亜共栄圏の考えに通底する。そうして、大東亜戦争という侵略戦争に突入した。
 その結果、多くの農村青年たちが犠牲になったことを忘れることはできない。アジアの人たちは、日本の侵略を忘れてはいない。

◆TPPは市場原理主義の国際版

 2つめは、日米間の経済関係の強化であり、日米によるアジアへの市場原理主義の浸透である。
 これは日米軍事同盟の武力を背景にした、アジアに対する収奪の強化にほかならない。経済侵略といってもいいし、砲艦外交といってもいい。そのための重要な手段がTPPである。
 TPPは、これまでシンガポールなど4か国での、こじんまりした自由貿易圏だった。それを、アメリカが乗っ取り、盟主になって、いわゆる価値観を共有する国の集まりにしようと目論んでいる。その経済観は、アメリカ的な競争を基調にする市場原理主義である。それをアジアに広めようとしている。
 だが、アジアには、協同を基調にするRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の構想がある。この構想はTPPとは相容れない。

◆農業・農協攻撃は市場原理主義の国内版

 3つめは、アメリカ的な市場原理主義の日本国内への浸透である。
 アベノミクスの経済成長戦略は、市場原理主義の浸透を阻害する、いわゆる規制の改革で、それに付随する既得権益の破壊だという。ドリルで岩盤規制を破壊するのだという。
 その対象は、農業であり、医療であり、介護だという。これらの分野は、いずれも協同を基本原理にする分野で、競争にはなじまない。だが、協同を強権的に破壊して、競争を基本原理にする市場原理主義の一色に染め上げようとしている。
 以上の3つとも、競争に至上の価値をおく、冷酷で非人間的な弱肉強食の考えである。そして、3つとも農業・農村に深くかかわっている。

◆アジアは争いを好まない

 首相には、武力がないと平和は守れない、という脅迫観念がある。その行きつく先は、日米軍事同盟の強化であり、その先兵になって、アジア諸国を武力で恫喝し、醜い弱肉強食をはかるものである。いよいよ、抑止力という軍事力の制度的拡大が始まろうとしている。その手始めが集団的自衛権の行使容認である。
 だが、アジア諸国はこれを否定する。アジアには東南アジア友好協力条約があって、その第2条で、「武力による威嚇又は武力の行使の放棄」をうたっている。これは、日本国憲法の平和主義と同じ考えである。アセアン(東南アジア諸国連合)は、この不戦条約を域外に広めようとしている。
 安倍首相の武力による平和の維持、という考えは、この条約を否定するものとして、アジアは拒否するだろう。
 ガンジーの「非暴力」の考えは、アジア全域で、いまもなお生きている。武力は究極的な暴力なのである。

◆アジアは国際協調

 アベノミクスの成長戦略の最重要な柱はTPPである。TPPは、アメリカが主導して、全ての関税をゼロにすることを狙っている。まさに市場原理主義である。TPPで、アジアを市場原理主義の競争に引き込み、アジアの目覚しい発展の成果を横取りしようという。
 それだけではない。勢い余って、ISD条項で他国の国内制度にまで干渉することを狙っている。これは、まさしく内政干渉であり、国家主権の侵害である。アジアをアメリカに隷属させる、というのだろうか。そんなことが出来るはずがない。
 このTPPに対峙するのが、アセアン諸国が提唱するRCEPである。

◆RCEPとTPPの違い

 RCEPは、一昨年の閣僚会議で確認したように、「参加国の発展段階を考慮し……」が大原則である。TPPと違って「関税撤廃」が大原則ではない。
 ここでいう発展段階は、高いか低いか、という1次元的な見方ではない。歴史と風土の違いである。
 TPPは、アジア的協同社会は遅れた社会で、やがて歴史的必然としてアメリカ的競争社会へ向かう、という誤った歴史観をもっている。
 だがRCEPは、そうした歴史観をもっていない。アジア的協同社会は、協同社会の特質を保ちながら、アメリカ的な競争社会とは違う方向へ向かって発展する、という歴史観をもっている。
 アジアの人たちは、競争によって相手を打ち負かして排除するのではなく、1人の迷える子羊を万人で励まし合い、支え合っていこうと考える。
 RCEPもTPPも、ともにFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を目ざすというが、この点は決定的に違う。FTAAPは夢のまた夢というしかない。

「RCEPとTPPの交渉参加国」

◆農協批判の嵐

 アベノミクスの成長戦略の、もう1つの柱は規制撤廃である。
 企業にとって、市場原理を貫徹することは、何よりも大事なことである。そのための障害は、すべて取り除きたいと考える。
 障害がなければ、企業は思う存分に振舞える。最大の抵抗組織は協同組合であり労働組合である。農業分野では農協である。
 農協をつぶし、家族農業をつぶし、農業を農外資本の草刈り場にすることが、いまの、そして、これから始まる農協批判の目的である。
 だが、この企みは失敗するだろう。われわれには現職の農水大臣を小選挙区で落選させるだけの地力がある。

◆「滴り落ちる理論」のまやかし

 農協つぶしの理論は、次の「滴り落ちる理論」に基づいている。
 農協をつぶし、労組を無力化し、企業が思う存分に振舞えるようにすれば、経済格差は拡大する。だが、これを全く意に介さない。それどころか、格差の拡大は経済成長のために必要な刺激剤だ、と考える。
 それを正当化するために、格差の拡大は一時的なことで、やがて企業の利益は滴り落ちる、と考える。だから、格差を縮小するための政策は必要ない、「自然に」滴り落ちるのを待てばいい、というのである。
 だが、実際には、企業はすでに328兆円もの莫大な社内留保金を溜めこんでいる。史上最多の金額である。しかし、いつまで待っても滴り落ちてこない。つまり、この理論は、低所得者をさらに低所得に追い込むための理論である。ごく一部の高所得者の所得をさらに増やすための、それを隠すための、まやかしの理論である。
 この理論は、やがて破綻するだろう。アベノミクスの破綻と運命を共にするだろう。格差拡大による個人消費の萎縮が、やがてアベノミクス景気を後退させるからである。

◆協同組合へ向かう歴史の流れ

 世界には、格差拡大を否定する大きな潮流がある。格差拡大を否定する協同組合へ向う歴史的な潮流である。
 協同組合の母国といわれるヨーロッパをみると、EUでは人口の3人に1人が協同組合の組合員だという。フランス、ドイツなど、過半数という国は少なくない。フィンランドのように、4分の3以上という国もいくつかある。

「EU27カ国の人口に占める協同組合の組合員の割合」 アメリカも市場原理主義で凝り固まっているわけではない。それは、ごく一部にすぎない。アメリカでは、2つ以上の協同組合に加盟している人を重複して数えると、延べ3億5000万人が協同組合の組合員だという。
 このように、世界には競争社会から協同社会へ向かう滔々とした歴史の流れがある。この流れは変えられない。日本の農協はこの潮流の先頭に立っている。

◆競争社会から協同社会へ

 この歴史の流れに逆らって、農協などの協同組合を解体し、株式会社を頂点とする資本主義体制に呑み込むのか。競争によって、アメリカ的な弱肉強食による格差拡大を促進する方向へ向かうのか。それとも、この流れに従って、ヨーロッパやアセアン諸国のように、協同組合を助長し、協同組合を経済社会の基礎単位とする社会体制、いや国家体制の構築へ向かうのか。そうして、友愛にみちた公正な国家を作り上げるのか。
 新しい年を迎えたいま、われわれは、その岐路に立っている。選択を誤れば、悔いを千載に残すことになる。世界の歴史は協同組合国家への方向を指し示している。

 

(前回 選挙の上手な自公

(前々回 絶対支持率24%の市場型農政の嵐

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