絶対支持率24%の市場型農政の嵐2014年12月15日
総選挙が終わり、自民党が圧勝した。「農を国の柱に据える」とした共産党も躍進した。
政党支持の状態を、忠実に示す比例区の、政党別の得票数をみると、与党の得票数は全投票数の47%にすぎない。野党の53%よりも少ない(数字は未確定)。投票率は52%だから、与党は全有権者の24%に支持されただけだ。4分の1にさえならない。
自民党が圧勝した、というよりも野党がバラバラになって自滅した、というほうが実態に近いのである。
さて今後、最長で4年間は、自公政権が続くだろう。農政は、どうなるか。
新しい政権は、市場原理主義農政を、ますます強力に押し進めるだろう。農業者をバラバラにして、目先の私利私欲を追求するため、互いに競争させ、相手を倒すまで戦う、そのように仕向ける農政である。農外企業もこの醜い競争に参加させよう、という。
この市場型農政に対峙するのは、協同型農政である。市場の横暴を排し、1人の倒れそうな農業者を万人が励まし、互いに協力しあって、目先の利益だけでなく、社会全体に目をくばり、より良い社会を目指す農政である。農協は、その中核を担っている。
総選挙後の市場型農政は、当分の間、協同型農政の中枢部である農協に、的をしぼって攻撃を強めるだろう。農協の底力が試されることになる。そして結局、農協の底力は市場型農政を骨抜きにするだろう。
◇
市場型農政の国際版はTPPである。
TPPは、これから本格的に始まるアベノミクスの目玉である。国内需要の拡大を断念して、海外市場へ打って出ようという。アメリカと組んで、アジアの経済発展の成果を横取りしようという。そのためには、農産物の輸入関税をゼロにするなど、農業を犠牲にして、食糧主権を放棄することさえいとわない。
このTPPに加盟するため、反対勢力の中心にいる農協に攻撃を集中するだろう。さっそく、これから始まると予想される農協つぶしの国際的な魂胆は、ここにある。
◇
市場型農政の国内版は、農業への、まさしく市場原理の徹底的な浸透である。つまり、「不効率」な農地利用をしている農業者から農地を取り上げて、「効率的」な農外企業に利用させる、という政策である。
ここでも、これに抵抗する農協に攻撃を集中して、やり玉に上げようとする。今後に予想される、農協つぶしの国内的な魂胆は、ここにある。
◇
市場型農政を推進するための当面の課題は、国際的および国内的にみて、農協つぶしだ、と考えている。いわゆる「所得倍増」や「輸出倍増」などは、目くらましにすぎない。
新年から、激しい農協攻撃が始まるだろう。さっそく、農協の司令塔である全中と県中に攻撃を集中するようだ。
しかし、やがて失敗し、敗退するだろう。
◇
TPPで日本の農業を壊滅させ、食糧主権を放棄することに、多くの国民は反対している。
TPPは、農業と食糧だけの問題ではない。医療崩壊の問題でもあるし、裁判権の一部放棄という国家主権の問題でもある。賛成する人は、決して多くはない。
また、農業を農外企業に任せることに賛成する人も、決して多くはない。
古今東西で、企業に農業を任せている国はない。果樹などの一部の部門で、企業が一時的に成功するかもしれない。しかし、長続きはしない。そうなれば、ただちに企業は撤退する。そして跡地は荒地になる。
◇
あらためて、総選挙の結果をみてみよう。
自民党が圧勝したからといって、当選したすべての自民党議員が市場型農政の推進派ではない。反対して協同型農政を主張する議員は少なくない。
その一方で、野党第1党を保った民主党は、当選した全ての議員が市場型農政の反対派ではない。
与野党の双方に、協同型農政派と市場型農政派とが入り混じっている。自民が圧勝したからといって、市場型農政派が圧勝したわけではない。
今後は、こうした状況のもとで、農協は市場型農政に立ち向かわねばならない。各政党の中に協同型農政派を増やすことが、今後に課せられた不断の課題である。
◇
農協つぶしの嵐は、一方的に吹き荒れるのではなく、乱気流をともなって吹きすさぶだろう。だが、今後4年間吹き続けるわけではない。
4か月後の来年4月には統一地方選挙がある。1年半後の再来年7月には参議院選挙がある。その間にも国政に影響するような重要な地方選挙もある。アベノミクスが行き詰まるかもしれない。市場型農政を骨抜きにする機会は何度でもある。協同型農政を盛り返すために、農協が底力を発揮する機会は、何度でもある。
(前回 玉虫色の自民・民主TPP公約)
(前々回 農林水産物輸出の危うさ)
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