徹底した話し合いのその先に2016年11月8日
毎週火曜日更新
改正された農水省の「総合的な監督指針」を斜め読みした。
農協法第7条では、「経営目的の明確化」と題して、「農業所得増大への最大限の配慮」を求め、そのために農協は、「高い収益性を実現し事業の成長発展を通じて投資または事業利用配当を行うよう努める」こととある。
これについて、監督指針では、(1)組合員への事業方針、事業計画の説明を徹底すること、(2)事業を適切に運営すること、(3)組合員の利用状況や事業の採算性を適切に開示すること、(4)事業の見直しは組合員の声を聞いて実施すること、を求めている。
また、農協の自己改革の実行とは、「担い手の所得向上に向けた経済活動を積極的に行うこと」であるとし、監督指針は、ここでも(1)自己改革の実践においては組合員との話し合いを徹底すること、(2)自己改革は担い手の評価をふまえ実践すること、としている。
このように見てくると、キーワードは「組合員との徹底した話し合い」ということになろう。
組合員が、出資者であり運営者であり事業の利用者であるという協同組合にとって、組合員との「徹底話し合い」を監督されるのも奇妙な話ではある。
☆ ☆ ☆
それでは、誰との徹底した話し合いが必要なのか。まずは、農協の職能組合化を求める農水省からみると、「組合員と徹底的に話し合え」としている先は、組合員としての「認定農業者」を中心とした担い手層と考えるのが妥当であろう。
次に、現場の農協側からみると、正組合員層はもちろんのこと、食と農の応援団としての准組合員層も入り、地域社会への貢献という観点からは広く地域住民までを対象としたい、という想いが一般的であるから、このギャップは相当大きいものがある。
農水省は、今後も毎年、認定農業者や法人経営体にアンケートやヒアリングをして、「農協が話し合いに来たか」「意見を聞きにきたか」「認定農業者の役に立っているか」をリサーチし農協を評価するであろう。
☆ ☆ ☆
一方、農協側からみると、全国1000万人の正・准組合員から万遍なく「農業や地域のために農協は良くやっている」という評価を得たいとして、単位農協あるいは県域・全国域で「組合員アンケート」をやろうという話になるのではないか。
その先に、「認定農業者」からは評価はさほどされなかったが、正・准組合員の大宗からは「良くやっている」と評価され、農協法改正から5年以内に「農水省」対「総合農協とその連合組織」が再度対峙することになるのか、はたまた両方から、もっと悪い評価結果が出て大変なことになるのか、先は見通せない。
☆ ☆ ☆
だからこそ、今できることは、認定農業者や法人経営体にも、これまでのつきあいが深い正組合員層にも、その先には食と農でつながれる准組合員層や地域の人々にも、「農協は良くやっている」と言ってもらえるよう最善を尽くすしかないのではないか。
「閉塞感」を打破し「危機感」をバネに、より良き環境適応を目指すしかないと考える。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日