"はめられた感"がある中で2016年12月6日
政府は、11月29日、新たな農業改革方針となる「農業競争力強化プログラム」を決定した。
これは、政府が進めるTPP中・長期対策としての「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂するもので、生産資材価格の引き下げや農産物の有利販売に向けた全農改革などに加え、指定生乳生産者団体制度の見直しを追加した13項目を柱としていると聞く。
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この度の決定に至る経緯を遠いところからみていると、かなりの唐突感がある。これは、政府の「規制改革推進会議農業ワーキンググループ」が、11月上旬に公表した「農協改革への意見」から始まる。
この提言では、1年以内に全農の農産物委託販売を廃止して買取販売とし、購買事業は撤退して企業に譲渡。信用事業を営むJAは半減させ、北海道で多く採用されている「クミカン」は即時廃止などである。
なるほど、政府のめざす農協改革の本丸はここにあり。改正農協法施行後5年を待たず、ここら辺りを突破口に見据え、本気でゴールである「准組合員利用規制の導入、農林中金、全農、共済連の株式会社化、総合農協からの信・共分離」を狙ってきているといえよう。
一方、自民党は、年明けから、これもTPP中期対策として、小泉農林部会長率いるプロジェクトチームによる「農林水産業骨太方針」の策定を進める中で、次第に全農改革にターゲットを絞ってきた矢先であったから、自民党農林族議員にとっては規制改革推進会議の提言が、かなりの「ビーンボール」という業界紙報道もうなずける。
見方によっては、小泉農林部会長率いる自民党PJは、JAグループや農業の生産現場と丁寧な議論を積み重ねてきたようであるから、自民党農林族議員とJAグループに取り込まれないよう、政府が規制改革推進会議を使って、事前にハードルを上げてきたようにも見える。
そうなると、小泉農林部会長は、政府や気脈を通じているはずの規制改革推進会議とJAグループや生産現場との板挟みとなってしまう。そこで、自民党農林幹部や公明党が非公式会合を断続的に開き、「落としどころ」を政府と調整。
小泉氏がこだわった、「政府・与党が全農を始め農協の自己改革を進捗管理する」ことを前提に、この度、策定されたプログラムに落ち着いたとの構図と新聞報道にある。
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このような中で、農協の現場では、平成29年度事業計画の策定に着手しはじめたJAも多い。
やはり営農経済事業改革の名の下、農畜産物販売力の強化と生産資材価格の低減による農家手取りの拡大が第一のテーマとなろう。
個々のJAの取り組みを見ていくと、平成28年度から始まる「創造的自己改革」をより深化していくことになる。
ただ、ヒト、モノ、金など経営資源に限界がある単位JAとしては、まずは、農業でメシを食っていこうとする農家、なかんずく認定農業者等に「良くやっている」「変わってきたな」と思ってもらえるような訪問活動、何らかの生産奨励措置の実施、生産資材価格の低減努力、買取販売の強化など、できることは限られているが取り組むしかない。
もとより、全農改革も含め、今から5年の行動計画なのか、すでに2年経過して、あと3年で成果をだす必要があるのか。政府が下そうとする、JAグループの「評価期間」は、あえて明確にされていないのが現実である。
すでに、「はめられている」状況であることは間違いない。
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