ワクチン後進国の汚名をそそげ【森島 賢・正義派の農政論】2021年4月19日
菅義偉首相は、コロナの新規感染者数が、大阪などで過去最多を記録している非常事態の真っただ中に、アメリカへ行った。コロナ対策の最高責任者が、外国へ行ってきた。
普通の国なら、非常時のとき、最高責任者は海外にいても、急遽帰国して陣頭指揮に当たるものだ。だが首相は、敵前逃亡するように海外へ行ってきた。
首相には、コロナで多くの国民が、生命の危機にさらされている、という緊迫感がない。大阪の状況は、感染の「まん延」などという生易しいものではない。感染爆発という方が事態を忠実に表している。また、医療の逼迫などといっているが、そんな悠長なことではない。医療の崩壊である。そして、多くの専門家は、東京をはじめ、全国で近いうちに感染が爆発し、医療が崩壊する、と予想している。
しかし首相は、やがてワクチンが、この危機を救ってくれる、と無責任に楽観し、傍観している。
だが、そのワクチンにも、重い暗雲が垂れ込めている。
上の図は、コロナワクチンについて、 Our World in Data が、先週末に主要国の接種の推移を示したものである(文末を参照)。主要国は、順調に接種している。
イスラエルは、接種率が60%を超え、集団免疫を獲得したと判断したようだ。だから、コロナはほぼ消滅したと考えて、マスクの屋外での着用義務を解除した。
英国と米国も集団免疫の状態に近づいている。英国では、飲食店の屋外での営業が解禁になった。夜中でも飲食できるようになった。米国は、7月4日の独立記念日に、コロナからの独立を宣言する、といっている。
接種率が小さいといわれる欧州諸国も、20%に近づいている。
一方、日本をみると、接種率はほとんどゼロである。これでは、ワクチン後進国と嘲笑されてもしかたがない。
なぜ、日本は、こんな惨めなことになってしまったのか。そして、これからどうすればいいのか。
◇
ワクチン後進国と嘲笑されるようになったのは、ワクチンの国内開発と国内生産を、これまで行ってこなかったからである。これまで、目先の利益にならない技術開発を軽視してきた。また、目先の利益にならない生産体制を作ることはムダと考えてきた。つまり、長期的にみて必要な技術開発を怠ってきたし、非常時に備えた生産体制を作ってこなかった。
その報いを示したものが、上の図である。100年に1度というコロナ禍に襲われて、日本がワクチン後進国であることを露わにしたのである。これは、日本の政治の怠慢と無責任を表している。
◇
こうした状況のもとで、日本がコロナ禍から脱却するには、ワクチン先進国に懇願してワクチンを恵んでもらうしかない。そうして、なるべく早く集団免疫を獲得し、コロナ禍から脱却するしかない。
いま日本は、そうした惨めな状況にある。いまのままでは、日本がコロナ禍から脱却するのは、世界のなかで最後になってしまうだろう。
◇
このような状況から脱するために、政治が為すべきことは、なりふり構わず、恥を忍んででもワクチンの提供をワクチン先進国に懇願するしかない。そうして、第4波の爆発的なコロナ禍を、できるだけ早く、できるだけ軽微にすることである。
それには、全国的な医療崩壊を回避するために、コロナ病棟を各所に新設するなどして、医療体制を非常時的に再編することである。
そうする一方で、ワクチン接種を加速すれば、ワクチン後進国などという汚名をそそげるかもしれない。
◇
いまからでは遅い、などと言ってはいられない。できるだけ早く、できるだけ多く、ワクチンを確保しなければならない。それとともに、接種の体制を非常時体制に切り替えねばならない。
そのようにして、国民のコロナ禍を最小限にすることは、政治の責任である。国民に対する外出自粛の要請は、その責任を果たした後でいい。政治が為すべきことを為せば、国民は政治を信頼して、要請されなくても、自発的に外出を自粛するだろう。そうして、コロナを終息させるだろう。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日
-
全国のうまいもの大集合「日本全国ふるさとマルシェ」東京国際フォーラムで開催2025年9月16日
-
産地とスーパーをつなぐプラットフォーム「みらいマルシェ」10月から米の取引開始2025年9月16日
-
3つの機能性「野菜一日これ一杯トリプルケア」大容量で新発売 カゴメ2025年9月16日
-
「国民一人ひとりの権利」九州大学教授招き学習会実施 パルシステム2025年9月16日