都道府県でワクチンの接種を競え【森島 賢・正義派の農政論】2021年5月24日
今朝から、東京と大阪で自衛隊によるコロナワクチンの大規模な接種を始めた。遅まきながら、他の道府県でも、接種の迅速さをを競い始めた。ようやくコロナ禍に光明が見えてきた。
都道府県は、コロナ禍という未曽有の非常時の中で、その実力を問われている。どれほど迅速に接種を進められるか。そのため、非常時に即応できる体制を作れるか。
政府は、「自助」などと無責任なことを言ってはいられない。国家的な非常時だから、責任は政府が負うべきである。逃げるようなら、そんな政府はいらない。
どうすればいいか。政府が持っている権限と財源の大部分を、都道府県に渡すしかない。そして政府は、都道府県、つまり地方の共同体で組織する連邦政府に徹すればいい。
そうなれば、国の形は協同組合国家に近くなる。農協の長い歴史的経験が、大いに参考になるだろう。
右の図は、コロナワクチン接種の進行状況を、都道府県ごとの接種率で示したものである。これが最新のもので、先週以前のものである。こうした公表の遅れにも、政府の責任感と緊張感の希薄さがみられる。
進行度が最も早いのは高知県の7.0%で、最も遅い神奈川県の2.6%の3倍に近い。これほどに大きな差がある。
この差は、知事の熱意と能力の差だけではないかも知れない。そうだとすれば、知事は、そのことを県民に説明すべきである。そこには体制の問題、つまり、知事の力が届かない、権限と財源の問題があるのではないか。
◇
接種が遅れている1つの原因に、接種資格の問題がある。政府は、ようやく歯科医師にも資格を持たせた。非常時なのだから、薬剤師や獣医師、医学生や看護学生にも持たせればいい。10時間程度で習得できるようだ。だが、政府はこうした接種体制の拡充に消極的である。ここでも危機感がみえないし、責任感がみえない。
知事たちが、接種を早める競い合いのなかで、このような体制問題が槍玉に上るだろう。
◇
今朝から自衛隊による大規模接種を始めた。だが、ここにも体制の問題がある。司令部がない、という問題である。
自衛隊の元幹部が嘆いていた。政府は、自衛隊に厚生業務の手伝いをせよというのか。それとも、非常事態に対処する体制の一翼を担えというのか。それが分らない、という嘆きである。
自衛隊の海外派兵や先制攻撃には、筆者は反対だが、災害出動など国内の非常時に活躍する気概と能力は評価している。その能力をコロナ対策にも活かしてほしい、と考えている。平時には、援農活動をすれば、なおいい。自ら農業を営んでもいい。
◇
言うまでもないことだが、ワクチンの接種は、接種そのものに目的があるのではない。接種によって、コロナ禍を最小限に抑え込むことにある。集団免疫を獲得して、コロナを早期に終息させることにある。
だから、接種をいっそう加速し、終息するまでの期間を短縮して、それまでのコロナ禍を最小限にすることが目的である。
◇
いままでの体制では、1年以上もの長い間、それができなかった。多くの国民をコロナ禍で苦しめ、必要で充分な治療もせずに死へ追いやってきた。
だが、ワクチンができたいま、ようやく光明がみえてきた。
ワクチンを接種してコロナを早期に終息させ、国民の災厄を最小限にするには、いままで長い間、無為無策を続けてきた旧い体制は解体するしかない。整備・拡充して、新しい体制を作るしかない。
それは、徹底した検査体制と、必要で充分な隔離・治療体制の整備・拡充である。ワクチンの接種が始まった今、もう遅いなどと言ってはいられない。
◇
最後に一言。
報道各社の世論調査によれば、7割程度の国民が、政府のコロナ対策に不満をもっている。だが、この不満を政治の力にして改革する組織がない。
いったい野党は、何処で何をしているのか。
(2021.05.24)
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