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水田活用交付金見直しは与党の公約違反【小松泰信・地方の眼力】2022年2月16日

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「農業が生き残るのは、競争力などではなく、その国に農業を守る意志があるのかどうか、その一点にかかっている」(農民作家・山下惣一氏「振り返れば未来」、西日本新聞2月15日付)

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「水田活用の直接支払交付金の見直し」事案の要点

「令和4年度予算においては、主食用米の中長期的な消費減少を踏まえ、米の需給安定を図るため『水田活用の直接支払交付金』による転作支援を措置。当該交付金について、輸出用米や高収益作物への作付転換を進めるべく、産地交付金による飼料用米等への転作支援の加算措置を原則廃止するとともに、今後5年間に一度も米の作付けを行わない農地を交付対象外とする等の見直しを実施」と記しているのは、『令和4年度農林水産関係予算のポイント』(令和3年12月野村主計官)における「4 米の需給安定と水田農業の高収益化の推進」の項。

これが、「水田活用の直接支払交付金の見直し」事案の中核部分。主な見直し内容は、次の3点に整理される。
(1)今後5年間(2022から26年度)で一度も水張り(水稲作付)が行われない農地は、27年度以降交付対象としない。
(2)多年生牧草については、種まきから収穫まで行う年は現行通り10a当たり3万5000円。しかし、収穫のみを行う年は同1万円に減額。
(3)飼料用米などの複数年契約は、22年産から加算措置の対象外。20、21年産の契約分は10a当たり6000円加算に半減。

農家への打撃は必至

北海道新聞(2021年12月16日付)の社説は、この見直しの震源を「補助金頼み助長と批判する財務省の審議会が、財政圧迫リスクを問題視したため」とにらんだうえで、「道内では昨年度、都道府県で最も多い536億円が支給された。(中略)交付金が経営の支えだった農家への打撃は必至だ」と、危機感を募らせる。

今後5年間に一度も水稲を作付けしない水田を除外する方針については、「完全に畑地化すれば土地評価額が下落し、農協からの借り入れで担保割れする恐れもある。逆に食用米作付け継続を促しかねない」とする。

さらに"魅力的な産地づくり、高収益作物の導入・定着を支援します"という農水省の姿勢に対しても、「栽培体系確立にも時間が必要だ。そもそも『もうかる作物』に偏重する対応には疑問が残る」と指弾する。

岸田文雄政権が農政ビジョンを明確にしないことに不満を表し、「矢継ぎ早に変わる『猫の目農政』に産地は疲弊した。生産や流通を再構築し、低迷する食料自給率向上を図ることが急務だろう。新自由主義脱却をうたう岸田首相は農政の転換も示すべきだ」と、正論を突きつける。

寝耳に水の机上の空論が、農業経営を追い詰める

「農民」(2月7日付)によれば、農民連と農民連ふるさとネットワークは1月26日、農水省に対し、「生産調整に協力し、転作作物の生産拡大に取り組んでいる農家に対する重大な裏切りであり、水田・日本農業を維持できなくさせるもの」として、見直しの撤回と農家経営の支援強化を求めた。想定内ではあるが、農水省は撤回拒否。

ただ、農水省は「今回の見直しは飼料用米に手厚かった交付金を改め、麦・大豆の本作化、高収益作物の導入・定着をめざすもの」と述べたそうである。

さらに同紙は、次のような現場からの叫びを紹介している。

「転作割合の高い北海道では、交付金がなくなれば経営が続けられなくなる。土地改良区への支払いもできなくなる。これでは農家も農業団体も立ち行かなくなる」(北海道農民連)

「農協も県も"寝耳に水"だと言っている。飼料が高騰し、輸入牧草が入ってこないなか、牧草の補助金単価を引き下げるのはムチャクチャだ」(福島県農民連)

「転作でソバをつくっているが、水田のままだとソバが育つ土壌にならない。ソバ用の土壌にするには、作り続けなければならない。5年に1度水田に戻せなどというのは机上の空論だ」(長野県農民連)

JAグループは責任を果たせ

日本農業新聞(2月12日付)も、飼料用米以外での転作を促す農水省の姿勢に苦慮する産地の声を伝えている。

中山間地は山から水が流れてきて乾田にならないため「麦類も大豆も栽培が困難」、かつ高齢化のため「新たな品目を作るのは難しい」(福島県田村市、農家)

「22年産の組合員への推進では急な方針転換は難しい」(青森県JA十和田おいらせ)、「農地維持のために、1枚当たりの面積が小さかったり、機械が入れなかったりするような場所だから米を栽培している」(同JA専務)

「...飼料用米は依然、転作の柱。急激な方針転換は困難だ」(JA関係者)

また同紙は、「財務省の諮問機関、財政制度等審議会は昨年12月、22年度予算編成に向けた意見書で、水田活用交付金について、米の需要減で転作面積が一層増えることを懸念し『転作助成金の膨張を招き財政的持続性へのリスクさえはらんでいる』との認識を示した。さらに、飼料用米を念頭に、大規模経営ほど『収益性が低く、補助金交付の多い転作作物』を作る傾向が強いとも指摘した。助成負担が比較的軽く、『高収益作物』と位置付ける野菜・果実などへの転換を促すべきだとした」として、今回の見直しには「財務当局の厳しい目」が影響していることを示唆している。

当該意見書(令和4年度予算の編成等に関する建議)の「5.農林水産」を読んで驚いたのが次の3点。
(1)食料自給率についても、多面的機能についてもまったく触れられていない。
(2)そこで指摘されている内容と「農林水産関係予算」の編成には齟齬が見られない。
(3)審議会の委員(臨時も含む)に農林水産が有する「価値」を語れる人がいない。

以上3点の通りだとすれば、残念ながらこの国に、そして悲しいかな農水省に、この国の「農業を守る」意志はない。

ところで、日本農業新聞のこの記事の最後に、「自公両党は、水田活用交付金など水田フル活用予算について、恒久的に確保することを昨年の衆院選公約で掲げている」と、思わせぶりに書かれている。

選挙で自公両党を担いだJAグループには、この選挙公約を守らせる責任がある。忘れたとは言わせない。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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