【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】本質的議論を急がないと国民の農と食が守れない ~農や地域の「集約化」は将来推計の前提を履き違えた暴論 ~生産者と消費者の歩み寄りでは解決しないギャップを埋めるのこそが政策2025年10月16日
今、総理が誰になるか、どの政党とどの政党が組むかという数合わせとかの議論ばかりが行われてますけれども、そもそも私たちは本質的な議論、日本の将来、日本の子供たちを本当に守れるのかということについて、もうちょっと真剣に議論しなきゃいけないじゃないですか?
米騒動で、米についても食料についても関心が高まった言うけれども、じゃあ、コメ政策の議論、結局、ほとんど具体的に行われてないじゃないですか。今、本当にね、私たち正念場にいるんですよ。このまま放置すれば、あと5年以内にもうここで米作れなくなる、農業をやる人いなくなる、この地域消滅するよと、そういうふうな地域が続出しているわけですよ。
それをどうやって食い止めて、日本の地域社会コミュニティを守って、そして洪水を止められるような農業の持つ多面的な機能を守って、そしてみんなの暮らしと命を守れるか、そのためにはどうしたらいいのか?それに応える政策の議論ちゃんとしてますか?そのことが問われています。
よく統計を出してきて、将来推計で、そもそも農業の基幹的従事者は20年くらいで30万人切って、農家もいなくなるし、地域も衰退するんだから、みながいなくなった後のことを考えて、大きな企業にでも入ってきてもらって、大規模化とスマート農業と輸出でバラ色だとかね。それでいいじゃないかみたいな。
あるいは、日本の地域そのものも、だいたい日本の人口があと何十年かで8千万人くらいにだから、農業も集約化だけど、地域も集約化なんだと。そんなところに無理して住むのが金の無駄なんだと。病院も学校も、電車もバスもいらない。拠点都市を決めて移り住めばいいと。これが一番効率的な社会のあり方かのようにまことしやかに言われている。
だいたい統計の読み方が間違ってますよね。統計が言ってるからそうなるんだと。違うじゃないですか。今の不十分な政策と不十分な取り組みをそのまま放置して引き伸ばしたら、こういう未来になっちゃいますよ、というのが統計の意味するところですよ。予測の意味するところですよ。
だからそうならないように政策を変えて取り組みを変える。それこそが政治政策の役割であり、みんなの取り組みの役割じゃないですか?そういう議論をきちんとしなきゃいけない。そうしなければほんとにね。五年が正念場だと私全国毎日のように各地回ってるけれど、みんな言ってますよ。そうなったら、農業が崩壊する、地域が崩壊するだけじゃないですよ。都市部に集中した皆さん、多くの人口が食べるものもなくなるわけですよ。海外から物を止められたらみんな飢え死にする。そのぐらい、我々は地獄に向かってるんだということを考えなきゃいけない。
なのに、緊縮財政だ、農業に予算は出せないと。アメリカから言われた在庫処分の武器とか買うのに百兆円規模の金がかかる。どっかから切らなきゃいけない。一番切りやすいのが農業だと。いざという時に命を守るのが「国防」だというならば、まず命を守る要の食料、それを生み出す農業、これこそが安全保障の一丁目一番地ですよ。それを、予算が切りやすいから標的にする。そういうことしか考えてなかったら日本の将来が本当に持たなくなってきます。
そのためにも今こそ、農業にこそ積極財政ですよ。今、米価が上がって、消費者の皆さん苦しいって言ってる。生産者の皆さんを30年前の米価に戻ってやっと一息と。しかし、また増産基調になってきたらまたお米の値段が下がって、今度はまた生産者の皆さんも、やっぱりやっていけないとやめる人がまた加速すると。そういうようなことになりかねない。こんな状況を放置したら持たないんですよ。そのためにはどうするか?
この30年間で国民全体が所得の中央値が150万円も下がって苦しくなっている。なかなか、高い値段が払えない。生産者の皆さんはコストが上がって、もうちょっと高くないと作り続けることができない。そういう状態になっている。つまり、消費者の皆さんにとって払える米価と、それから生産者にとって必要な米価にギャップが出てきています。
それをどうするか。いやあ、生産者と消費者が、そこをみんなで理解し合って妥協点を見いだせばいいじゃないか?それができればいいですよ。でも、そういう状況じゃない。そういう時にそれを埋めるのは誰ですか?それこそ政策、政治の役割じゃないですか。それを早くやらなければ、農家の皆さんも、これから米増産して下さいって言われたって、安心して米を作り続けるための経営計画が立たない。
だから今こそ生産者の皆さんにとっても安心して農業ができるような、そういうふうな所得が確保できるように、そして、消費者の皆さんにとっても、家計に負担が大きくない形で食料品が買えるようにすると、両方をウィンウィンにするためには、その間を政策で埋める、直接支払いで埋める。この政策を早くやる。そこへ積極財政。それに一兆円近く仮にかかったって、それをやることで消費者と生産者の両方が持続できる。
それを、消費者、生産者、国民に委ねてお金は出したくないから、皆さんで折り合いつけるように頑張ってねと、そんな無責任なことをいつまで続けるのかってことですよ。そういうことについて、政治が、どう回答するのかということ。そのことが今問われているわけですよ。
五年以内に本当に雪崩のように農業やってる方々が激減して地域コミュニティが崩壊していく。そういう地域が本当に増えてきているんですよ。話し合って頑張ってね、だけでは間に合わない。ここは政策がしっかりと財政出動して国民全体が持続できるように、そういう仕組みづくりを、そういう稲作ビジョンを一日も早く具体的に提示する。それをみんなの力でやっていきましょう。頑張りましょう。
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