祭りのあとで【森島 賢・正義派の農政論】2022年10月3日
安倍晋三元首相の葬儀は、国葬という形で終わった。神道でいえば、葬儀祭というお祭りが終わった。
村祭りなら、祭りのあとは屈託のない日々が続く。秋の青空が天高く広がる。
村のもめ事は、祭りの日を目指して、それまでに解決する。それが、先人たちの狙いだったのだろう。智恵だったのだろう。
だから、祭りの日には、村人の全員が屈託のない顔で、今年の豊作を感謝し、来年の豊作を祈念する。そうして、冬支度に入る。町の祭りも同様なのだろう。
だが、こんどの国葬は違う。その意義について、屈託を残した人が多い。
上の図は国会議事録からの引用で、岸田文雄首相が、こんどの国葬の意義を、国会で説明した部分である。下の4点に要約できる。
1. 首相を長期に務めた 2.経済を再生した 3.外交の実績を作った 4.非業の死を遂げた
このうち、1.と4.について、弔意を表したいと思っている人は多かった。だからといって、国葬に値したかどうか、は別の問題である。
問題は、2.と3.である。この点について、国葬に値したと考える人は、多くない。
◇
村社会では、祭りのような大きな行事が終わると、その後、全員が集まって反省会を開く。そうして次の行事に活かす。
こんどの国葬問題でいえば、その場は国会だろう。国葬に値するものだったかどうか。その論点は、内政と外交の評価である。
内政についていえば、安倍元首相は経済を再生した、と政府はいう。だが、いったい農業者や労働者の所得が、どれほど増えたのか。そして、生活がどれほど豊かになったのか。これが問題である。
また、外交・安保についていえば、安倍元首相は平和の維持に貢献したという。だが、中国と米国の対立という大状況のなかで、米国寄りの姿勢を強め、ことに日米軍事同盟を強化した。これを、どう評価するか。
◇
今日から国会が始まる。そこで期待したいことは、こうした骨太の議論である。
だが、野党にその姿勢はない。旧統一教会問題という政治倫理の問題に矮小化している。そうして、政府・与党といがみ合っている。国民が国会の議論に期待していることは、このような、ささいな問題ではない。
農村共同体では、ささいなことで他人の悪口を言い募る人が、共感を得ることはない。このことを銘記すべきである。
(2022.10.03)
(前回 国葬の悪しき前例)
(前々回 世界の潮流の変わり目に立って)
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