支店店舗のレイアウト変更は、現場職員が計画しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年2月7日
130近い支店の再編計画を1年半で組織合意した希有な事例
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
この数年で、JAの支店への来店者数が3割近く減少し、金融店舗のあり方が問われている。店舗体制の見直し、事業体制の改革、事業機能の再編、店舗レイアウトの変更などが企図されているJAや支店は少なくないはず。JAの経営にとっても優先度の高い課題になってきている。
そこで提案。支店の課題の検討は、まず、現場の支店職員で行うべし、私はそう考えている。それができる能力も熱意も、JA職員は持っている。とりわけ、店舗内の体制やレイアウトの変更など、今後どんな店舗が求められるか、こんな議論を支店内で始めてほしい。
18年ほど前の広域合併JAのコンサルでのこと。130近い支店数の再編整備計画の原案を作成した。それも、わずか8か月という短期間で。しかも、プロジェクトチームは30歳代の中堅職員、最初の3か月近くは、ビジネス研修、支店のデータ収集、調査方法の検討、それから130ほどの支店をすべて巡回して調査するのだから、ハードワークであったことは間違いない。
しかも予算の関係で、東京からのコンサル・チームの出番はなく、私一人。後にも先にも、支店数、調査から提案書作成までの時間、そして、経費、長~いコンサル業で、こんな経験は初めてで最後である。
この職員によるチームが作成した原案となる報告書(「支店現況調査報告書」と「支店再編整備計画書(案)」)は、理事会のなかにつくられた非常勤理事の「支店再編特別委員会」が引き継ぐ。私は、今度は、この委員会の理事とともに、原案の検証を兼ね、再び、全支店巡回調査に回ることに。
4か月ほどの巡回の間、理事からは、この支店の廃止理由は? なぜ存続なのか? どんな再編をするのか?年金受給者への対応はどうなる? こんな率直なやりとりがあった。個々の支店の立地環境や事業経営に関するデータの説明など、率直な意見交換を行うのに十分な時間と貴重な機会を得た。
職員のプロジェクトチーム、理事会特別委員会、経営執行部とコンサル、この4者の関係と役割、スケジュール、このケースの異例ともいえる成果の要因はこのスキームにある。「現場」を前にして、関係チームが検討する体制だ。本店の会議室で何回もの会議を重ねても出口が見つからないが、データを片手に関係者が現場に立てば、1回で結論に到達するケースが多い。大きな教訓だった。
職員が燃えた!店づくりは自分たちの手で
このコンサル事例から、もっと大事なことを学んだ。それは、職員との話し合いを通じて、支店のレイアウトの変更や店づくり、もっといえば、新店舗の建設も、JAの職員が考え、専門集団の知恵やノウハウなどの協力が得られれば、素敵な店舗ができあがるということである。
先のコンサルでは、再編計画の実践の第一歩として、農村地帯のモデルケースのサポートを担当した。3つの支店を1つに統合するケース。3支店の職員を集め、事務的な手続きとともに、各支店の取引データ、来店者数と取引内容、来店時間帯など、詳細なデータをもとに、検討会を始める。そこでの職員の関心、心配は、閉店する2支店の組合員への対応、とくに、年金受給者など高齢者対応で議論百出。JAの問題よりも高齢の組合員への配慮や手当を心配する。JA職員の組合員への思い、悩みは組合員。でも、真剣で前向きだ。
そんななかで、職員から難題が提起される。統合支店では3支店分の事業が開始されれば、来店者数は増えるし、職員数も増える、店舗は現状のままでいいのか、というに課題。このJAは、合併前までは、店舗レイアウトの変更や新店舗の建設は、本店と連合会に相談し、業者に工事を委託していた。そんな事情から、私の仕事外と認識していた。しかし、職員は熱心に議論を続け、レイアウトのラフスケッチや什器・備品の検討などを行っており、自分たちで納得した店づくりをしたい熱い思いを感じる。
計画通りに再編をするためには、店舗改装の問題も同時に完了しなければならない。そこで、本店の担当部署と相談し、現場の職員の意向をまとめて提案することにして、議論を継続した。同時に、職員に協力をお願いして競合店調査、市場動向調査などを実施、合わせて検討を行う。
JA職員はチャレンジ精神、熱い思い、責任感を持っている
月に2回、現地に赴き、職員と検討を重ねてきたが、行く度に検討内容は深まり、店内レイアウトは具体化し、店舗の大幅な改築についても複数案がまとめられていた。職員が、組合員や地域のみなさんに利用してもらいたい店づくりへの思い、目の色が変わっていた。この支店の改築は、建物の躯体工事が必要で、総費用は6,000万円を越えたが、本店の担当部署は現場の職員の労に報いる形で改築が実行された。職員が再編を企画し、検討し、実践した好事例として組織内で讃えられた。再編時期は少し延びたが、私にも学びの多い事例だった。
JAの職員は、地元地域に対して熱い思いをもっている。組合員を第一に考え、目標をとことん追求し、挑戦し、やり遂げる責任感をもっている。JAには、ダメダメ職員はいない。このコンサル以降、JAの職員と一緒に支店建設にも取り組むことになる。この10年で数十店の店舗を建設した。
今回紹介した支店再編のコンサルで、もう一つ特筆したいことがある。閉店する支店について、当該支店の職員と一緒に、支店が誕生した産業組合当時からの歴史を調べ、簡単な読み物にして、閉店するセレモニーで配布したこと。組合員や地域のみなさんに、長い間の利用への感謝を形にした。こういう節目を、大事にする仕事をしたいものだ。
◇
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