【JCA週報】協同組合理念の明確化と貫徹のために(5/全6回)(一楽輝雄)(1978)2023年4月17日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の前身の一つである協同組合経営研究所が発行した「協同組合経営研究月報」No.292(1978年1月)に掲載された一楽輝雄理事長(当時)の「協同組合理念の明確化と貫徹のために」です。
ボリュームの関係から6回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。
協同組合理念の明確化と貫徹のために
「協同組合理論と現代の課題」研究会のオリエンテーションから-(5/全6回)
一楽輝雄 協同組合経営研究所理事長
1.協同組合とは何ぞや
(1)その目的と理想(1)
(2)競争原理対協同原理(2)
(3)相互扶助と自主独立(3)
2.協同組合原則について
(1)加入脱退の自由(3)
(2)民主的運営(4)
(3)出資金の性格(5)
(4)剰余金処分の合理化(5)
(5)事業活動に優先する教育(学習)活動(6)
(6)系統組織対連合組織(6)
2.協同組合原則について(つづき)
(3)出資金の性格
協同組合の出資金は、これを一種の資本とか、不完全な資本などと性格づけるのは全く正しくない。資本と言えば、利潤を目的として使われるものであるが、協同組合の出資金は利潤を目的として使われるものでなく、そんな目的で出されたものでもない。
組合員が個々自らで経済行為をしようとすれば必要とする資金、すなわち1万円の物を買うためには1万円の資金が必要である。1,000人の者が1万円ずつの物を共同で買うためには、その代表者は皆から1万円ずつを出してもらわなければならない。協同組合の出資金はこの場合の1万円と同じ性質のものである。
皆が1万円ずつ代表者に渡して、代表者がそれによって商売をして、儲けを皆に分配するというのであれば、この場合の出資は投資であり、出された資金は資本として出されたことになる。協同組合の出資金はこうした趣旨のものであってはならないことは言うまでもない。協同組合は非営利の組織であると認めながら、その出資金は資本の1種であるというのは矛盾も甚だしい。
協同組合の事業を利用するために組合員となるのである以上は、組合員は事業運営に必要な額の資金を、各自が事業を利用する程度に応じ分担して出資することを、自明当然のこととしなければならない。
利用する事業分量に応じて出資をしなければならないということを、組合員の常識として徹底させないところから、たいていの協同組合において、その固定資産ですら全部を自己資金で賄うことができないという状態をつづけている。この反面で、極めて稀れな例外的現象とはいえ、その事業利用高に見合う出資必要額を遥かに超過する金額を出資して、高率な出資配当を期待している組合員も存在するとのことである。
協同組合がその事業を遂行するために恒常的に必要な額の資金は、組合員が分担して拠出しなければならないということは、簡単明瞭な理屈であるにかかわらず、これを組合員に徹底させている組合が極めて少ない現状は、如何なる理由によってであろうか。実に不可解としなければならないことである。
逆に言えば、協同組合の活動は、出資金を中心とする自己資金によって賄える程度の恒常的資金使用量で可能な限りの事業分量にとどめておくべきに、たいていの組合がこれの範囲を遥かに越えた分量の事業を行なっているのは、如何なる理由によってであろうか。このことは経営の堅実性という点からのみではなく、民主的運営の貫徹という点からも問題としなければならないこと前述の通りである。
(4)剰余金処分の合理化
今日のわが国では、剰余金の処分に当って多くの協同組合が出資配当をしている。
剰余金を組合員に分配するには、これを利用高分配金とすれば法人所得税等を払わなくてよいのに、出資配当とすればこれらを払わねばならない。出資金が各組合員の事業利用高に按分して出資されているなら、出資配当は全廃して利用高配当一本に充当すればよいわけである。
しかし各人の出資金はその事業利用高に比例すべきものであるという建前が、従来においてほとんど無視されてきた状況においては出資配当の全廃は容易でないのが当然である。出資金の性格を組合員の理解に徹底させることによって、全体としての出資金を必要な金額にまで増額することによって、経営的基礎を確立するとともに民主的運営の物質的基盤を築くことができる。
同時に各人の出資額を事業利用高に比例するよう、年毎ではなくとも、何年か毎に調整することによって、出資配当を全廃するについての障害を除くことができる。組合員は出資として必要な額の資金を拠出する能力がないのではない、という状態において、必要な出資を各自になさしめる努力を怠り、その結果、事業利用高と出資額とが組合員毎に比例する状態でないために、出資配当の全廃ができないとして、いつまでも推移するのは、協同組合経営者の怠慢と言うべきではないか。
(続く)
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