上場銘柄の加重平均価格は1俵4万6417円【熊野孝文・米マーケット情報】2025年1月21日
1月16日に開催されたクリスタルライスのFAX取引会で買い手の卸に示された売りメニューの価格は1俵4万6,417円であった。前回のコラムでクリスタルライスは1月16日の取引会から売人の売り唱え値を上限にすることにしたことからその価格が必見になると予告したが、前回(昨年11月)に比べ約6割も高い価格が提示されたことも驚きだが、なんとこの価格でも応札する買い手が多く抽選になった銘柄が続出したというのだから、まさにコメ業界は異常事態になっているとしか言いようがない。


1月16日の取引会の上場概要は、76産地銘柄6万5,564俵が上場され、上場価格の加重平均価格は4万6,417円で、前回に比べ158%高、前年同期比では284%と約3倍近い価格。主な銘柄の上場価格は表の通りだが、個別産地銘柄の上限価格は、青森まっしぐらは3万8,710円~4万9,160円、岩手ひとめぼれ4万5,860円~4万9,160円、宮城ひとめぼれ4万5,560円~4万9,660円、宮城つや姫4万5,560円~4万9,160円、秋田あきたこまち4万2,260円~5万2、160円、山形つや姫4万8560円~4万9,660円、山形はえぬき4万3,560円~4万7,060円、福島会津コシヒカリ4万4,960円~4万8,160円、福島中通コシヒカリ4万1,160円~4万7,960円、茨城コシヒカリ4万4,410円~4万8,660円、栃木あさひの夢4万0,660円~4万5,360円、栃木とちぎの星4万3,860円~4万7,960円、埼玉彩のかがやき4万4,410円~4万7,960円、千葉ふさこがね4万0円、新潟魚沼コシヒカリ5万3,160円~5万6,460円、新潟一般コシヒカリ4万5,660円~5万1,460円、福井コシヒカリ4万6,760円~4万8,660円、宮城みやこがねもち3万2,160円、秋田タツコモチ2万4,260円、佐賀ヒヨクモチ2万9,160円、アメリカ産精米㎏533円と言った具合。
売り手は出来るだけ有利に販売したいのだから売り唱え価格を上げるのは当然なので、これほどの高値になったのだが、驚くのはこの価格でも応札する買い手が多かったことから抽選になり、落札決定者への通知は翌日の午後になってしまった。例えば最も売り唱え価格の幅が広い秋田あきたこまちは、売り唱え価格が最も安いものは4万2,260円だが、高値は5万2,160円まで33件1万5842俵の売り物が出ているが、4万2000円台から4万6000円台までは買い手が多く、抽選になった模様だ。さすがに5万円までは買い手が付かなかったが、売人としては抽選になるぐらいならもっと高値を提示しておけば良かったということになる。現状はそうした従来の相場観が通用しない状況になっており、だからこそ産地銘柄であっても売り唱え価格が1万円も違うという現象が起きている。
応札したものの不落になってしまった卸は「量販店からは白米の値上げ交渉について以前のようなことは言われなくなった。ただ、玄米の仕入れ価格だけは教えて欲しいと言われている」という。量販店側も異常なコメの値上がりで毎回、毎回値上げ要請されることにマヒ状態になっており、もはや納入卸の言うがままに売り場の精米販売価格を改定するしかないと言った状況。
市中では1月30日に開催される食糧部会で農水省から何らかの対策が示されるのではかという期待的な観測が強まっており、中には飼料用米と政府備蓄米を交換して13万トンを大手卸に対して全農が供給するという情報が流れており、卸別の数量まで取り沙汰され、2月告示で3月に実施されるという情報も流れている。ただ、卸業者の中には13万トンを緊急的に売却しても今のひっ迫状態は緩和されないと見る業者もいる。それに加え制度米穀(加工用米、輸出用米等)のみならず酒造用米やもち米まで7年産米の契約目途が立たない状況になっている。制度米穀を多く扱う大手卸は国が対策を示すまでは産地に対して制度米穀の契約を持ち掛けることはしないと明言している。なぜなら今、契約することは売り手買い手双方に大きなリスクが伴うためだというが、この時期にこうした判断をしなければならないこと自体に今のコメ政策がすでに行き詰まっていることの証でもある。
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